ともだちはモモー

ともだちはモモー

2021年7月24日

128

「ともだちはモモー」佐野洋子 rリブロポート

 飛んでいった帽子を追いかけて、私はある家のドアをたたく。出てきたおばあさんはお茶をごちそうしてくれる。おばあさんは、昔、小さな女の子で、お父さんと動物園にいった。海の見えるレストランでハヤシライスを食べた。そして、モモーと呼ばれていた。私が 帰る時、すみれ色のリボンを付けたモモーが送ってくれた。

佐野洋子の絵本にキーワードのように出てくるおばあさんと帽子。帽子が私とおばあさんを引きあわせ、ばあさんの中には生き生きとした小さな子供がいて、私と友達になる。佐野洋子は、そんな物語を繰り返し書いている。

「だってだってのおばあさん」では、おばあさんは五歳の子どもになった。「あの庭の扉をあけたとき」でも、私とおばあさんは一緒に遊んだ。年齢とか外見を超えて、その人の中にある本当の姿を佐野洋子は何度でも書く。強そうに見えるけど、本当は疲れちゃったライオン。森のなかにいるけれど、本当はクリスマスツリーになるために生まれたもみの木。洋服を着て街にいるけれど、本当は林で暮らしたい豚。だって、私はこうなんだもの、と佐野洋子は何度でも書く。

私が私であること。それを、いつも見つめている人だったのかもしれない。

2014/11/5