女帝 小池百合子

女帝 小池百合子

2021年7月24日

117

「女帝小池百合子」石井妙子 文藝春秋

 

大ベストセラーでもあっという間に順番が回ってくる県立図書館で長々待たされた。ということはよほど予約が立て込んでいたのだと思われる。それくらい、みんなが興味を持って読む本であるらしい。
 
にもかかわらず、未だ彼女の学歴詐称問題がこれといって告発されないのはなぜなのだろう。彼女の公に示した「卒業証書」はいつも見極めがつかないほど小さい写真であり、重要部分は隠されたりぼかされたりしており、かつ、以前、明示されたものと最近明示されたものでは絵柄が微妙に違う。カイロ大学の日本語学科長からは、彼女は卒業している、という証明書らしきものが出されているが、それは大学が出した正式の卒業証明書ではない。一体、カイロ大学の卒業生は就職先に卒業証明書など提出しないのだろうか?不思議でならない。
 
小池氏の話すアラビア語は、スラング混じりの拙い口語でしかない、とアラビア語話者は口を揃えて証言する。通訳を名乗っていたときに彼女が喋っていたのは、ほぼ英語であり、アラブの有力者は、そもそも英語で会話するので、それで不自由はない。最近は彼女は「アラビア語なんてもう忘れちゃったわ」というそうだが、いわば、This is a pen.程度しかしゃべれない人間がハーバード大学主席卒業です、と言っているくらいの大変な実力差であるという。
 
彼女を陥れようとする陰謀めいた本なのかと思ったら、綿密で丁寧な大量の取材に基づいた誠実な本であった。何を信用するかと問われたら、私はこの本を信用する。それは、読んだ者にしかわからない事実の確実な整合性があるからである。
 
なぜ彼女が都知事の座に座り続けているのかわからない。コロナが騒ぎになってから、オリンピックの延期が決まるまでのあの不気味な沈黙を、私は忘れない。彼女の周辺に人が口を揃えて言う、彼女の不誠実を、私は信用する。

2020/11/2