学校が教えないほんとうの政治の話

学校が教えないほんとうの政治の話

2021年7月24日

35

「学校が教えないほんとうの政治の話」斎藤美奈子 ちくまプリマー新書

 

2016年の本。選挙権年齢が18歳に引き下げられたのを受けて、斎藤美奈子、頑張りました、という本である。
 
周囲に「行け行け」とせつかれ、しょうがないので、あなたは投票所に向かいました。投票所の前には候補者の顔写真がついたポスター。並んでいるのは見知らぬオッサン、オバハンばかりです。誰が誰やら分かりません。投票用の個人ブースには「自民党 A山B男」「共産党 C山D子」などと書かれた紙がはってあります。ますますわからなくなります。困ったあなたは考えます。
「自民党?なんか聞いたことあんな。共産党ってのも聞いたことあんなどっちにすっかなあ。まあ良いや。じゃあ自民党ってことで」
 これで選挙のすべてが終わりです。そしてあなたはいうのです。「こないださあ、選挙に行ってみたけど、べつにおもしろくもなかったわ」。そしてついでにもう一言。「政治なんか、誰がやっても変わんないんじゃね?」
 
だよなー。と、つくづく思う。上記描写は非常にリアルである。選挙って、行っても達成感がないし、結果に実感もわかない。私は一度たりとも棄権したことがない真面目な選挙民ではあるが、投票後の無力感は、こんなもんである。あれこれ考えきちんと投票しよう、と思っていてさえ、似たような感想に陥ってしまいがちである。
 
そんな彼らに、斎藤美奈子は、贔屓のチームを作れ、と勧める。AKB総選挙に行くのは贔屓の子がいるからでしょ?と。そして、どうやったら贔屓のチームを作ることができるか、を丁寧に教えてくれるのである。
 
政治に中立はありえない、というところから話は始まる。何故か「中立」という言葉は一番正しそうに見えたり、穏健そうに見えたりしがちであるが、政治は中立なんてものが存在しないのだ、ときっぱり彼女は教える。そして、体制派と反体制派、資本家と労働者、右翼と左翼、国家と個人、保守とリベラルなど、それぞれの対立する概念について、歴史に立ち戻って紐解いていくのである。これらのどちらをあなたは選ぶのか、どちらに親しさを覚えるのか、そこから贔屓チームを選べばよろしい、と。
 
非常にわかりやすい解説である。そして、彼女自身の書く姿勢もまた、中立ではないのではあるが、かと言って、反対する側への理解や解説も丁寧に行われているので、読み通した結果、斎藤美奈子と全く違う立場を選ぶことも十分にできるものとなっている。
 
学校で政治を教えることが非常に難しい昨今、これは個人的な政治の教科書として非常に優れた本である、と思うし、うちの子たちにも読ませたいなー、と思うんだが。だが、これを読み通せるほどの読書力、理解力、忍耐力がある人は、実はすでにここに書かれていることくらい、全部知っているんじゃないか、という疑問もちょっとあるわね。
 
(引用は「学校が教えないほんとうの政治の話」斎藤美奈子より)

2018/7/4