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「室町繚乱 義満と世阿弥と吉野の姫君」阿部暁子 集英社文庫
「パラ・スター」の阿部暁子である。まさかこんな歴史小説を書いていたとは。
吉野の姫君、透子が、楠木正成の息子を追って、変装して京に行き、観阿弥、世阿弥、足利義満と出会う。ってどんなご都合主義？と思うんだが、そこはまあ、ご愛嬌というもので。透子は、跳ねっ返りのおてんば娘で、義満はツンデレのイケメン。舞台は室町時代だが、登場人物は極めて現代的である。そもそもが重厚な歴史小説などは目指していないのね。
それでも、敵、悪だと思いこんでいた相手方が、自分と同じような悩みもあれば笑いもする人間であることに気がついたり、戦とは民が大勢死に、苦しむものであると理解したり、姫君はきちんと学ぶのである。そこはよく出来ている。
鬼夜叉という観阿弥の息子とのラブストーリーに落とし込んでしまうのかと思ったら、そうでもなかった。あくまでも、姫君の成長物語では、ある。ちょっとした恋の気配はあるけれどね。
この人、ちゃんと文才があるから読ませちゃうんだなあ。こんな歴史小説もあり、かも。
2021/1/20