20
「ポトスライムの舟」 津村記久子 講談社
「とにかくうちに帰ります」でこの人を知った。そのときは、芥川賞作家だなんて全然知らなかった。この「ポトスライムの舟」で受賞したそうだ。
「とにかくうちに帰ります」でも思ったことだけど、この人は人物を姓で、それもカタカナで書いたりして、客観的な位置に置こうとしている。でも、その心理は物凄く主観的でリアルだ。どうでもいいことを重ねていくと、どうでも良くなくなる。人生は些細なことの積み重ねでできていることがよくわかってくる。
必死で働いて、お金をためて、ちょっと使うことに後ろめたさを感じてしまう主人公の心理が、わたしにはよくわかる。世界一周をする船旅の費用が自分の収入の何年分か、とっさに計算しちゃうのも、それで行こうかな、と考えるといきなりその気になっちゃうのも、よく分かる。そして、その決意とは裏腹に、日常が流れていくのも。
この人、結構すごいぞ、と思う。ちゃんとこの人を見つけて賞をあげたのなら芥川賞もやるじゃん、と思う。この言い方、私って何様、って感じの意見だけどね。
2013/5/26