シェルパ斉藤の島旅はいつも自転車で

シェルパ斉藤の島旅はいつも自転車で

2021年7月24日

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「シェルパ斉藤の島旅はいつも自転車で」斎藤政喜 二玄社

シェルパ斉藤は、結構昔から知っている。世界中のトイレを研究して回ったり(『東方見便録:「もの出す人々」から見たアジア考現学』)、耕うん機で日本中を旅して回ったり(『時速8キロニッポン縦断』)、そのネタでタモリ倶楽部に出たのも見た。他にもいくつか著作があるらしいが、基本、どこかをウロウロして、その記録を本にしている。

この本は、島を自転車で旅した記録である。回ったのは、波照間島、八丈島、種子島、周防大島、隠岐の島、神島、房総半島、北大東島、南大東島、対馬、釜山、大津島、硫黄島、五島列島、大島、礼文島、小笠原諸島、石垣島、直島、田代島、加計呂麻島、徳之島である。

私も島が好きだ。海をわたっていくので、簡単には帰れない感が強いし、その分、日常と隔絶された感覚が味わえる。閉鎖された場所にいるのは本来なら苦手なのだが、旅人であるからこその、すべてを見渡せる把握のしやすさにも感動してしまう。独特の文化や雰囲気があるのも捨てがたい。

たくさんの島を自転車でスイスイ(あるいはえっちらおっちら)走っているのを読んでいたら、すっかり島旅をしたくなってしまった。島はいいぞ。

礼文島や直島、石垣島、大島など私も旅したことがある大好きな場所も出てくる。一度行かねば、と前からずっと思っている島もある。いいなあ。

たったひとつ、私がかちんと来たことがある。実は石垣島の旅は、シェルパ斉藤ではなく、彼の妻と彼の息子の旅の記録である。その前に、彼と息子が大島を旅したのを受けて、妻が、息子が離れてしまう前に一緒に旅をしたいと希望したのが石垣島旅である。

たまには妻の望みを叶えてあげよう。そう判断した僕は、正月明けに妻と南歩が自転車で島へたびに出ることを許可した。 (引用は「島旅はいつも自転車で」より)

そう書いているのである、彼は。許可かよ。と、私は思った。いつも君がふらふらあちこちを歩きまわっているのは、曲がりなりにも妻が子どもを二人、しっかり家で育てているからだろうが、それに対して、『許可』かよ。『叶えてあげよう』かよ。えらく上からじゃないか、君、と。

いやいや、私は彼の妻じゃないしね。彼がウロウロして本を書くからご飯を食べられているのかもしれないけどね。なんかなあ、子どもと旅をするのに「許可」してもらわなきゃいけないのかよ、ってやっぱり思ってしまう。うるさい?わたし。

まあ、そんなわけで、楽しい楽しい島の旅のお話ではあります、はい。

2016/5/23