幕末横浜オランダ商人見聞録

幕末横浜オランダ商人見聞録

2021年7月24日

50

「幕末横浜オランダ商人見聞録

C・T・アッセンデルフト・デ・コーニング 河出書房新社

 

C・T・アッセンデルフト・デ・コーニングは1851年8月から11月まで長崎に、1859年9月から1861年3月まで横浜に来訪したオランダ人商人である。最初は出島での穏やかな日々、次回は開国後の騒乱に満ちた横浜の姿が描かれている。
 
日本という国への思い入れがあるというよりは、一種の冒険譚のような本である。自分たち異人を斬り殺そうとする水戸のローニンからどのように身を守ったか、とか、どんなふうに商売をうまいことやったか、とか、横浜でイギリス人やアメリカ人を相手に誇り高きオランダ人として自分がどのように振る舞ったか、など自慢話を寄せ集めたようなところがあるが、当時の横浜の様子がよくわかって興味深い。たくさんの会話文が、当時の生き生きとした様子を見せてくれる。
 
歴史とは、しかめつらしい事実の記載の羅列などではなく、こうした生きた人間の日々の生活の記録の間から立ち上がってくる空気や声、匂いや音のようなものからこそ受け取れるものだと思う。

2018/7/31