彫刻家の娘

2021年7月24日

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「彫刻家の娘」トーベ・ヤンソン 講談社

ムーミンシリーズを夏休み中に読み返すぞ!なんて考えていたのに、三冊しか読めなかった私。子どもが宿題をしなくても叱る資格はないわ。宿題は冬休みに持ち越し。そして、次は春休みかも。

この本は、ムーミンシリーズの作者、トーベ・ヤンソンの子供時代の思い出を描いた自伝的作品。1973年に英語版から邦訳された後、絶版となり、1991年に改めてスウェーデン語版から翻訳し直されたものだ。

少女トーベは好奇心と冒険心が強く、自分の心に決めたことは貫き通す。父は高名な彫刻家だ。町の中で色々なペットを飼い、彼ら(ペット)にどんな迷惑をかけられてもそれを受認し、嵐や火事に興奮して乗り込んでいく冒険心を押さえきれない。母はすべてを受け入れ、時に少女の無謀な冒険をこっそり後押しする。まるでムーミンパパとムーミンママそのものである。

ムーミン谷にやってきた新しい生き物たちを何の疑問もなく受け入れ、住む場所と食べ物を提供し、時に冒険に乗り出すムーミン一家は、トーベ・ヤンソンの家族の姿だったのだ。自然の恐ろしさと美しさ、森や海を自分たちの場所として走り回り、時に理不尽な隣人にも寛容さを示す毎日。

ムーミン谷がどこから生まれてきたかがわかる、幼児生き生きとした目を通した物語だ。

2016/10/28