待ち遠しい

待ち遠しい

2021年7月24日

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「待ち遠しい」 柴崎友香 毎日新聞出版

どうしてこの本を読もうと思ったかは、不明。図書館に予約を入れてから手に入るまでに時間がかかると、その辺りがわからなくなる。この作家のものを読むのは初めてだし、題名に覚えもない。たぶん、どこぞの書評で読みたくなったんだろうなあ。

四十代を目前にした春子という主人公の住む家の大家さんが亡くなって、新しい大家さんがやってくる。六十代の未亡人、ゆかり。それと、裏手の家に住むまだ二十代の新婚の女性、沙希。その三人の緩やかな関わりを中心に物語は進む。

恋愛や結婚に全く興味のない春子が、であるがゆえに時々つきあたる生きづらさ。夫を亡くし、子どもはニュージーランドに行ったきり、でも、アクティブに生きようとしているゆかり。女性は普通、結婚して子どもを持つものでしょ、と言ってはばからない沙希は、女手一つで育てられたという。

主人公は一人で生きることを選んだ春子なのだけれど、なんと言っても年齢が近く、また、子どもと離れて暮らす境遇からも、ゆかりが、私には一番、ちかしい気がする。沙希は、ひとり親の母が「沙希のことは先よりも知っている」などと断言してしまう辺りが信田さよ子の著作を思い出させて、なんとも重苦しい。沙希の内面は、結局よくわからないままだ。

女性が複数集まってごちゃごちゃと暮らす感じが三浦しをんの「あの家に暮らす四人の女」を思い出させたが、あちらのほうが、ひとりひとりが何を考えているかがリアルにわかったような気がする。この本は、今ひとつ、何を目指しているのかがわからないうちに終わってしまったような。

2019/8/31