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「恋するソマリア」高野秀行 集英社
「謎の独立国家ソマリランド」の続編。前作は講談社ノンフィクション賞を受賞したりして、すっかり高野さんの出世作になった。学生時代から高野さんを追っかけてきた我々としては嬉しい限りだった。
無政府状態、危険地帯、外務省から退避勧告の出ているソマリアの中に、内戦を集結させ、民主主義を達成した謎の国がある。ただし、国際的には一切認められていない。それが、「ソマリランド」だ。前作で高野さんはソマリランドの実情を見事にレポートした。日本で唯一のソマリランド専門家となった彼は、以来、ソマリランドを含めたソマリアに片思いをしてしまった。彼らの実情を国際的に、いや、せめて日本だけでも知らしめたい、数々の誤解を解き、ソマリ世界の魅力を伝えたいと願ってやまないのに、当のソマリ人たちはちっとも自分たちのことを世界に知ってほしいとは思っていない。先進諸国が自分たちにそうかんたんに興味を示すとは思ってはいないし、「あたしのことをそう安々とわかられて貯まるか」という高慢の美人のようなプライドを持っている。それに対して高野さんは、たしかに非力かもしれないが、あなた達のことをこんなにわかっている外国人は他にはめったにいないんだよ、とついつい言いたくなるらしい。もっと自分のことを認めてほしい、わかってほしい、とソマリ人に懇願したくなる・・・・つまり、切ない恋の虜なのである。
というわけで、この本は、その恋の顛末というか、その後の話なのである。ソマリ人をもっと知りたいと願い、国を訪れ、いろいろな人と出会い、カート（葉っぱ）をともに噛み、ときに家庭に入り込んで家庭料理を習い、危険地帯へ入り込んで銃撃を受け・・・。好奇心に任せてどんどんと入り込んでいく。怖いと思うよりは知りたいと思う心が先走るのはいつものこと。それにしても、今回はかなり危険な目にあっているのに、相変わらずこりていないのが高野さんらしい。
登場人物の中では、ハムディという気の強い美女がとびきりかっこいい。今は北欧に亡命いしているそうだが、いずれは政治家になるつもりらしい。ハムディ大統領の誕生を心待ちにしたい気分である。そうしたら、高野さんも大統領のマブダチなんだがなあ。
2016/9/30