日本全国津々うりゃうりゃ

日本全国津々うりゃうりゃ

2021年7月24日

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「日本全国津々うりゃうりゃ」 宮田珠己 廣済堂出版

私の好きなタマキングこと宮田珠己氏の新作。この「私の好きな」という枕詞を付けたくなるのは、タマキングと、辺境作家の高野秀行と、グレちゃんことグレゴリ青山の三人だけだ。ものすごく面白いのに、あんまり世間に知られていないので、なんでなの~!と言いたくなる。この人たちを世にプッシュしたくて、ついつい力が入っちゃう。その割に、ブログでこの人たちのことを書いても、あんまりコメントがつかない。みなさま、どうぞよろしゅうご贔屓に。

タマキング氏は、そのデビュー作「私の旅に何をする」でびっくりして以来、ずっと応援している。「日本全国津々うりゃうりゃ」は、タマキングの面目躍如ともいうべき作品だ。普通の人がなんとも思わない風景も、彼の目を通すと、とんでもないワンダーランドに見えてくる。

まだ、私が読みかけている時に、夫が「自宅の章を読んだ?」と熱心に聞いてくるのだ。「あれには感心したな。もう、この人は、何でも面白く書けちゃう技術を身につけたんだな、と思ったんだ。」と。それは「大陸/と言っても過言ではないうちの庭」という章のことだ。ただ単に、自宅の周りをぐるっとひと回りするだけの話を18ページに渡って書いているのだが、これがすげー面白いの。いや、これ、技術というよりか、タマキングという人の、日々を生きる姿勢というか、視点というか、態度というか、世界というかが、こういうものだからなのだ。彼の存在自体が、すでに面白いのだ。

津軽に行って、延々石を拾う話も面白かった。私も津軽に行って、石を拾おうかとさえ思った。でも、帰りの荷物があまりに重そうなので、躊躇する。

ジェットコースター評論家でもある彼の富士急ハイランドの章も素晴らしい。私は、高所恐怖症で高速恐怖症なのでジェットコースターは絶対に無理なのだが、これを読んでいると、もしかして、乗れちゃうかも、とすら思えてくる。タマキングには、高齢者向きのジェットコースターの開発に、ぜひ取り組んでいただきたい。

ところどころに挟んであるタマキング直筆の挿絵もまた素晴らしい。この人、天才なんじゃないか、と私は密かに思う。そう思うのは、どうやら我が家限定らしいのが、残念でならない。

みんな、もっとタマキングを評価しようよ。面白いよ。

2012/4/21