沖縄から貧困がなくならない本当の理由

2021年7月24日

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「沖縄から貧困がなくならない本当の理由」樋口耕太郎 光文社新書

高野秀行が絶賛していたので読んでみた。なるほど、意外な展開の本であった。

市立図書館の本は、オンラインで予約を入れて市役所の出張所で受け取っている。市役所の職員さんが他の仕事の手を止めて対応してくださるのだが、しょっちゅう行っているので顔なじみになっていく。以前の担当者は明らかに迷惑そうに、余計な仕事をさせられる、という雰囲気を漂わせていたが、今の担当者は淡々と対応してくださる。・・・・と思っていたら、この本を受け取った時にいきなり「私、大学時代の親友が沖縄出身で、今、沖縄にいるんですけどね」と話しかけてきた。「彼は、貧乏ではなかったなあ。沖縄って本当に貧しいんですかね。まあ、土地代は基地があるせいで高いらしいですが。」という。いきなりのことで驚き、「いや、どうなのか、まずは読んでみますね。」と答えたのだが。あれは、何だったんだろうか。

というわけで、読んだ。沖縄は貧困率、失業率、高校退学率などがダントツ一位で、大学進学率も低い。貧困は確かにあるらしい。著者は大学の先生なのだが、課題図書を出し、レポートを提出するように求めても提出しない学生の多さに驚く。尋ねてみると、「課題図書は買ったが、難しそうなので読んではいない」「図書館に借りに行ったら出払っていたので空くのを待っていた」などという。レポートを提出しないと単位が取れないということは了承しているのだが、読む、出す、という姿勢が全く見られず、どうするつもりなのかもわからないという。それについて、考えていないようである。・・・という現状から始まって、沖縄が抱えている問題、その原因について追求していくのだが、話は意外な方に転がっていく。

沖縄というと南の島のおおらかさ、明るさ、なんくるないさ、という気分を想像していたが、奥底には全く違うものが潜んでいたことに驚かされる。が、それは沖縄特有の問題ではなく、実はそんな要素は日本中どこにでもあって、沖縄で浮いてしまう人たちのような経験を、私はあちこち転校しながら何度もしているし、子供が生まれてからの主婦たちの集団の中でも似たような目にあっている。

そういった意外な原因の追求から、話は急展開して、ぐいっと曲がり角を曲がる。それについていけない読者もいるだろうなあ、と思うのだが、私はものすごくわかってしまった。大人になってからずっと考えていたことが、ここにちゃんとまとめられている、とさえ思ってしまったのだ。そうか、そこに到達するのか、と感動さえしてしまった。どこに行き着くのか、知りたい人は、ぜひ読んでほしい。

これを返す時に、あの担当のおじさんになにか言ってあげようかな。でも、なんと言ったらいいのだろうか。読んでみてください、それから感想を語り合いたいですね、なんて言ったら妙な市役所内ナンパになっちゃうのだろうか・・・。

2020/7/17