あやかし草紙

2021年7月24日

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「あやかし草紙」宮部みゆき 角川書店

本は、基本、図書館で借りることにしている。ただ、どうしても家においておきたい本、贔屓の作家の本、図書館では入手できない本などは購入する。図書館で借りた本は、期限までに読まねばならないので優先する。購入した本は、いつでも読めるから、後回し。となると、所蔵したいほど読みたい本が、どんどん後回しになるというジレンマがある。そんなジレンマのせいで、読むのが遅くなったのが、この本である。

「おそろし」「あんじゅう」「泣き童子」「三鬼」ときて、これが今シリーズの完結編になるようだ。百物語の聞き手、おちかちゃんの身の振り方がそろそろ決まる・・・ということで。早いもので、16日そこらだったおちかちゃんも年頃の娘さんだものな。良いお嬢さんであった。おばちゃんは、大好きだったよ。

人の中には、恐ろしいものや醜いものもたくさんあるが、奥底には美しい温かいものもある、しんと静かに悟った強さもある。本当のことだけを話す場所で、それがはっきりと見えてくる。そういう物語だった。

本音が言えない、表面上だけで当たり障りなく人と接して、心の中には黒い闇が渦巻いている、そんな自分が嫌いだ、などといいたがる人がいるが、そんな人は、おちかちゃんのところへ行って、本当のことを話して聞いてもらえばいいのに、なんて思う。思いの丈を話しきったら、人はだれも清々として新しく人生を歩めるような気がしてならない。

いい物語だった。

2019/5/22