三鬼 三島屋変調百物語四之続

三鬼 三島屋変調百物語四之続

2021年7月24日

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三鬼 三島屋変調百物語四之続」宮部みゆき 日本経済新聞出版社

「おそろし」「あんじゅう」「泣き童子」に続く三島屋百物語の続編。相変わらず、面白い。話し手と聞き手が互いに納得しあうやり方としては、良い方法を思いついたなあ。この形態なら、ずっと物語を続けていける。とは言え、話の聞き役のおちかさんもそろそろいいお年頃。ここらで身の振り方を考えてみてもいいのでは、と思っていたら、そんな方向も見え隠れしてきた。

切ない話が多い。人の命の儚さ、亡くなった人への思い。生きるということは、亡くなった人の思い出を抱えていくことでもある。

恨みは時として人を鬼にする。人はそんなにきれいじゃない。間違うし、傷つける。でも、誰でも、誰かを大事に思っている。世の中は、正しいことと間違っていることに、すっぱりと分けることはできない。悲しみや苦しみと暖かさと美しさと、いろんなものが共存しているのが人生だ。

そんなことを改めて思う物語だった。

2017/8/23