沢村さん家はもう犬を飼わない

沢村さん家はもう犬を飼わない

2021年7月24日

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「沢村さん家はもう犬を飼わない」益田ミリ 文藝春秋

 

犬の話かと思ったら全然そんなことはなくて、60代の両親とアラフォーの独身娘の日常の漫画だった。十五年も昔に亡くなった犬のエピソードが出てきて、そこから題名が付けられたらしい。
 
60代の両親はそれなりに日々を楽しんでいて、ただ、アラフォーの娘がこれからも一人で生きていくのだと、それが少しだけ気がかりでいるみたいだ。娘の方は、淡々と生活しているように見えても、やっぱり独身であることにたまに負い目を感じている。かといって結婚したいと思っているわけでもない。そのあたりはとてもナチュラルだ。
 
年配の人がメインに据えられた漫画が増えてきたなあ、と改めて思う。昔は漫画なんて子どもの読むものだったから、登場人物も読者層に合わせて若かった。最近は漫画読みがどんどん高齢化しているから、登場人物だって高齢化するというものだ。どんな年齢の人間にだって漫画はマッチする文化である。
 
母と昔語りをする機会が増えた。子ども時代に漫画を禁止されたことに対する恨み言を言ったら、昔は漫画なんてくだらないものとされていたし、漫画なんてものを全く読んだこともなかったから、禁止しても何の問題もないと思っていた、と言われた。まあ、そうなんだろうなあ。「そういうものである」だけで子どもを規定するとそうなるんだろうなあ。もう、そのことで争っても得るところはないので、それ以上の追及は、しないけどさ。

2018/7/17