沢田研二

沢田研二

32 中川右介 朝日新書

やれやれ。長旅から帰国しました。しばらくオリーブオイルの入った食べ物はいらない気がする。現在、絶賛時差ボケ中であります。年齢とともに回復は遅くなるね。

旅の最初に読んだのが、この本。沢田研二は、小学生の私が最初に夢中になった人である。サワキという私の筆名が、そもそもが彼にちなんだものだし、たぶん一生ジュリーファンであり続ける私である。

ジュリー本は様々あるが、島崎今日子の「ジュリーがいた」が一番かな、と思っていた。が、この本もいい。と言っても、この本では1978年までしか書かれていない。まだ足りないぞ。島崎今日子は、ジュリー周辺の人たちへの綿密な取材から書き起こしたが、この本はジュリーをめぐるあらゆる資料を綿密に調べ上げることで書かれている。そのせいでそれぞれが別の側面からのジュリーを描き出せているように思う。両方読むとジュリーが立体的に浮き上がってくる。ああ、もう少し後の年代まで書き継いでくれなくちゃ。

ジュリーから少し離れるが、驚いたことに、この本にもジャニー喜多川の性加害の話が登場する。実際に被害を訴えるタレントがいて大騒ぎになったのに、実際に訴訟になりそうになると訴えを引っ込めてしまったりして曖昧になったいきさつが割に詳しく載っている。その時に、もっと真剣に向き合い、勇気をもって告発する人がいたら、こんなに大きな問題には発展しなくて済んだだろうに。腹立たしい。それ以外にも、芸能界が様々なプロダクションの思惑や、なんと多くの政治家までもが絡んで動かされていたのがよくわかる。これは今も続いているのだろう。あの亡くなった政治家がやたらとジャニーズ事務所と仲良くしていたのは記憶に新しいからね。

沢田研二の父親は、映画の仕事をしており、衣笠貞之助と長谷川一夫という二人の女形出身の役者とゆかりがあった。「ジュリー」という女性名のニックネームを持ち、ファッションやメイクに女性性を大胆に取り込んだ沢田研二の根源がここにあるのかもしれない。父親は「兄貴よりも派手な顔をしていたぼくを見て役者にしようと思ったという」とジュリー自身が語っているという。そうだったのか・・・。

この本に描かれているのはジュリーだけではない。彼を追うことで当時の芸能界、歌謡界のあらゆるスターたちが描かれる。それがもう、なつかしく、思い出深く、何とも楽しい。1978という沢田研二の絶頂期でこの本は終わってしまっているが、その後も彼は歌い続け、映画にも出、バラエティ番組でコメディもこなし、舞台に立ち続けている。今もコンサートやってるものね。そう、ジュリーは永遠に不滅。