思わぬところからの素敵

思わぬところからの素敵

31 宮田珠己 

新刊が出たらとりあえず即買いの宮田珠己である。「植物のふりした妖怪」同様、これもZINEなので一般書店では、たぶん買えない。ほしい人は、ネットで検索して入手してください。

これは2012年から2020年まで女性誌「ar」に連載していた「今月のただならぬひととき」と「いつも心に四次元を」両エッセイの中から気に入った章を抜粋して加筆したものだそうだ。宮田珠己といえば、旅を中心に、石拾いやジェットコースター、街角で出合う不思議な風景などのエッセイが多い。この本は自分の過去や日常生活がテーマになっているので、彼としては結構珍しいエッセイ集になっている。

珠己(たまき)なんて素敵な名前だと思っていたら、なんと野球好きの父親が球(ボール)と木(バット)から名付けたというから恐れ入る。小学校時代「たまきん」というあだ名をつけられて荒れ狂ったというから気の毒だ。あまりにそれがひどかったので、中学時代は「旭(あきら)」という通名を使ったというから、傷はよほど深かったのだろう。その後は元に戻して、今はわりに良い名前だと思っているというから、まずは良かった。

我が家の「宮田珠己」歴は結構古く、デビュー作の旅のエッセイで出会って以来、気が付く限りの新作をすべて購入してきた。それくらい「この人の書くものは面白い!」という衝撃があったのだが、本人は書いたものを人に読まれるのが恥ずかしくてならないという。それが仕事なので我慢してるけど、デビュー作も親が読むと思うと恥ずかしすぎて、そのことを意識しないようにしないと眠れないほどだったという。そして、今は、娘さんが年頃になってきたので、娘に読まれることを思うといても立ってもいられないというから笑える。笑えるけど、ちょっとわかる。下ネタがだめだというのもよくわかる。人見知りで人とうまく交流できないという話もすごくわかる。ホントは趣味の合う人といっぱい話したいのに、それがなかなかうまくいかないというのも。ぜんぶ同じような要素を持ってるぞ、私も。

「旅は泣きながら出発するもの」というエッセイにも共感した。25歳にして40か国を旅した田島知華さんという旅行ライターと対談した話である。旅の猛者であるはずの田島さんは、旅立ち前はいつも不安で泣き出すこともあるらしい。何度キャンセルしそうになったかわからないそうだ。宮田氏も初めての旅の時は気が重くて重くて空港に向かう途上、人にちょっとぶつかっただけでそれを口実に引き返しそうになったという。じゃあ、なぜ旅に出るかというと、田島さんは「行ってしまえばすごく楽しいのが分かってるから」だそうだ。宮田氏も「飛行機を降りた瞬間からいきなり楽しい」という。あんまり楽しいので帰るとすぐに次の旅を予約して、出発の日が来るとまた気が重くて不承不承出かけ、行ってみればまためちゃめちゃ楽しくて以下同文。

そうなんだよねー。ここでお知らせですが、あと数日で、私、また三週間ほど旅に出ます。三週間は私の経験上でも相当長い、この長さは初めてだと思う。行きたいところに行くのだけれど、出発前はちょっと気が重い。行っちゃえばめちゃめちゃ楽しいのはよく知ってるから行くんだけどね。ひとり旅の田島さんが不安で泣いちゃうというのもよくわかる。

今困ってるのは本をどれだけ持っていくかということ。今年に入ってからのペースで行くと三日に一冊程度なので、三週間なら七冊で足りそうだけど、旅先では読書がはかどっちゃうからなー。一応、十冊用意したけど、本不足に陥るのが怖い。まあ、夫も何冊か持っていくので、いざというときはそっちを読むつもりだが、それでも足りないかも。持ちすぎると荷物が重いよー。ってんで、そこで悩んで、ああ、気が重いこと。でも、行けば楽しいから。PCは持っていかないので、読んだ本の感想は、三週間後に帰国してからじわじわ書きます。しばらく更新がなくても、旅に出てるだけなのでご心配なく。って心配してる人なんているかしら。

全然違う話になっちゃった。宮田珠己の本は、たいてい面白いので、皆さん読んでね。実力の割にそれほど売れてないといつも残念に思ってます。爆売れしてもいいのになー。