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「焼野まで」村田喜代子 朝日新聞出版
村田喜代子さんは、全部読む。この人の書くものを、私は全て信頼している。
この作品は、以前に書かれた「光線」の視点を変えた作品である。村田さんご自身の子宮がんの放射線治療が描かれている。
「光線」はいわば外側から描かれていた。が、「焼野にて」は内側からである。前作では淡々と描かれていたものが、もっと感情を伴い、時に弱音も交え、しかしやはり冷静な筆致で描かれている。
村田さんの腹の据え方の見事さにはいつも胸打たれる。生きるということ、命というものへの姿勢といえばいいのだろうか。諦念というと少しちがってしまうのかもしれないが、あるがままを受け入れながらも、性根を据えて自分なりの選択をし、それを静かに貫徹していく。例え良い結果が出ようと悪くなろうとすべてを受け入れて。
外側から見たら、ただのおばちゃんが、くたびれ果てながら、遠方で病院治療を受けている、それだけの話である。が、その中に炎のように燃える静かな心根に、私は吸い寄せられずにはいられない。
村田喜代子さん。どうかいつまでも長生きしていただきたい。この方の書くものを、私はずっと読み続けたい。
2016/4/25