立花隆秘書日記

2021年7月24日

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「立花隆秘書日記」佐々木千賀子 ポプラ社

「知の旅は終わらない」にこっそりいただいたコメントで知ってすぐに手配した本。面白かった。俊さん、ありがとうございました。

作者は1993年から五年半、立花隆の秘書を務めた。その間の記録がこの本である。ちなみに彼女はそれ以前に小松左京の秘書もやっているという。立花隆が知の巨人なら、小松左京はSFの巨人ではないか。小松左京秘書日記も書いてほしいくらいだ。

立花隆が秘書を募集した経緯については、オンタイムでわたしも雑誌か何かで読んでいた。採用試験の内容を見て、うーむ、受けてみたい、と思ったものだが、当時乳飲み子を抱えたわたしには所詮無理な話であった。ちなみに筆記テストの内容は、例えば以下のようなものである。

歴代の大蔵大臣の名前をできるだけ挙げよ(姓だけでも良い)

科学者の名前をできるだけ挙げよ(和洋、時代、ジャンルを問わない)

次の人々の職業、肩書、ないし仕事のカテゴリーを述べよ

鎌田 慧、米沢富美子、スパイM、川島雄三、石川六郎、平岩外四、影山光洋、C ・L・ケーディス、吉田秀和、ゲーデル、森嶋通夫、山村暮鳥、米山俊直、幣原喜重郎、松井孝典、ウイルヘルム・ライヒ、那野比古、瀧口修造、フォン・ノイマン、伊藤隆、古井喜実、ロバチェフスキー、チョムスキー、イヨネスコ、ジョン・ケージ、井筒俊彦、ボリス・ヴィアン、清岡卓行、フランシスコ・ベーコン、日高敏隆、ネフェルティティ、松野頼三、中村元、ファインマン、フリッチョフ・カプラ、スウェーデンボルグ M・エリアーデ、岸田秀、高畠通敏、ラス・カサス、アレン・ダレス、キュプラー・ロス、渡辺格、ケイト・ミレッド、伊谷純一郎、ガルシア・マルケス

あとは、電話で相手を断るという実技試験や自己能力評価、面接など。さあ、皆さん、どれくらい答えられますか?

受からなくても、試験を受けること自体がエクサイティングな経験になりそうな気がする。そして、合格した佐々木さんは、一番優秀だったというわけでもない。あまり優秀すぎる人だと、それに見合った給料が払えない、かと言って、能力がないのは困る、という程良さで選ばれたらしい。うーむ。

立花隆の日々の様子は、非常に興味深いものであったので、手に入る人は、読んだらお得かも。作者の佐々木さんの聡明さもよくわかる。

五年半で、佐々木さんは退職されたが、その後はジブリにお勤めになり、その後、沖縄に移住されたという。それから何をなさっているのか、少しネットで調べてみたが、詳しいことはわからない。ただ、どうやら故郷の大阪にお戻りになっているようである。おそらくどこへ行っても生き生きと働き、楽しく日々を送っていらっしゃるのではないかと思えてならない。彼女の明るいバイタリティから、元気をもらった。

2020/7/28