美しき一日の終わり

美しき一日の終わり

2021年7月24日

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「美しき一日の終わり」 有吉玉青 講談社

有吉玉青は、有吉佐和子のお嬢さんだ。という紹介の仕方をしてはいけないのだろう、と初めて思った。この本は、すばらしい。

美妙という名の美しい少女のところに、六歳離れた八歳の秋雨という異母弟がやってくる。物語は、美妙が70歳を超えた現在と、秋雨が来てからの過去が錯綜しながら進む。

兄弟でありながら惹かれ合う二人と、彼らを巡る周囲の人々の歴史が語られる。そして、老齢になった二人が、今、過去を振り返りながら、穏やかに本当の気持を語り合う・・・・。

美しい文体だ。物語の世界にいつの間にか引き込まれ、静かに流れに乗せられていく。うっとりとしたまま、最後までたどり着いてしまった。

でも、最後は、そうだったのか、とため息をつく。美しき一日の終わり。でも、一日の、最後の最後までは描かれていない。それが救いなのかもしれない。

2013/1/25