舟を編む

舟を編む

2021年7月24日

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「舟を編む」  三浦しをん 光文社

2012年「本屋大賞」受賞作品。辞書作りの話です。基本は、「仏果を得ず」と同じかな。割と珍しい仕事に情熱を傾けるちょっと不器用な人間の熱いドラマ、っていうとまとまっちゃうかも。いや、そんな言い方でまとめちゃもったいないくらい面白い物語ではあるのだけれど。

言葉って面白い。私たちの心のなかには、とあるモノが存在していて、それはいろいろな形や色や肌触りを持っている。それを、人に伝えるために、言葉はある。心のなかのソレを、できるだけ同じ形で相手に手渡すために、そして受け取る側は、相手が持っているものと、できるだけ同じ姿を再現するために、言葉を道具として使う。だから、言葉が豊かであればあるほど、自分をわかってもらうことができるし、相手を理解することもできる。

ささやかに仕事をしている私は、仕事柄、よく辞書を引く。知っているはずの言葉の新しい側面や、思いがけない役割に、この年にして驚くこともしばしばだ。辞書というのは、そのすべてを請け負う。何をひいても、どんなことを調べても、しっかりと教えてくれ、しかも、調べた人間をどこかで応援し、励ましてくれる。

そんな辞書をつくり上げるため、長い長い時を戦ってきた人達の物語。それを支えてきた人達の物語。それぞれが、それぞれに味わいがあって、面白い。

みんな、ひたむきで、まっすぐで、嘘がない。こういう人ばかりが出てくる物語って、好きだ。と思っちゃう私は、甘いのだろうか・・・。

2012/8/4