魂の邂逅

魂の邂逅

2021年7月24日

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「魂の邂逅 石牟礼道子と渡辺京三」米本浩二 新潮社

渡辺京二という人を、私は石牟礼道子を支えた編集者として認識していた。彼女に心酔し、敬愛し、その仕事を支えた編集者であると。だが、この本を読んだらそれだけではなかったのね。石牟礼道子が亡くなったとき、多くのメディアが渡辺京三に追悼文を依頼したが、「身内が追悼文を出したらおかしいでしょう、嫁の追悼文を。私は夫ですから」と断ったという。ちなみに、渡辺京三には妻子がいたし、石牟礼道子にも夫と子供がいた。そうだったのか!と驚いたが、驚きながら、私ってば迂闊だからなあ、とおかしくもなった。

水俣闘争に冷淡であった渡辺京三が、ある時から先頭に立つようになる、その経緯には石牟礼道子との出会いがあった。石牟礼道子が晩年、新聞記者と親しく離しているだけで腹を立ててしまうようなところが渡辺京三にはあったという。

渡辺京二なしに、石牟礼道子の作品は世に出なかったと思う。亡くなる最後まで彼女を支えたのは渡辺京三である。であるのなら、その二人がしっかりと魂で結びついているのは当然のことといえば当然のことなのかもしれない。

石牟礼道子という得難い人の生涯を描くという意味で、意義深い本であった。

2021/1/29