今日も一日きみを見てた

今日も一日きみを見てた

2021年7月24日

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「今日も一日きみを見てた」角田光代 角川書店

 

6月に角田さんと河野武弘ご夫妻のトークイベントがあった。角田さんからの差し入れのドンペリのマグナムボトルでみんなで乾杯したりして(紙コップにちょっとずつだったけどね)ゆったりしたいい集まりだった。そこでは夫婦の馴れ初め話なんかを聞いていて、トト(二人の飼猫)の話題はあまり出なかったのだけれど。会が終わってからこの本を買って、サインをしてもらった。読むのに時間がかかったのはどうしてかというと、図書館から借りてきた本を優先してしまうから。この本はうちの子だ、と思うと、「待っててね」と棚の上に置きっぱなしになってしまうことが多い。反省。
 
この本は、角田さんが西原理恵子に初めて会ったときに、うちの猫が子どもを産んだら、七番目をあげる、と約束してもらって二年待ち、ついにやってきた猫、トトの物語だ。帯を大島弓子が書いている。豪華キャストだなあ。
 
角田さんは猫を飼うのは初めてだ。トトと暮らし始めて、彼女は日々驚く。猫に対する先入観が次々に打ち砕かれる。トトは、自己主張なんて強くなく、遠慮がちで静かで寂しがり屋で構ってもらいたがりだ。トトが病気をして、病院に連れて行く時、こんなにも切ないのか、と彼女は気づく。何かを願おう、と思ったときにトトの健康を祈ることで、自分が奮い立つのを知る。トトの寝顔を見ている時、自分が満ち足りていることに気づく。
 
読みながら、私は、あ、この感じ、知ってる、と思う。赤ん坊が家にやってきて、日々育てていく中で、私は毎日驚いていた。こんなにも心がかきむしられることがあるのかと思ったし、子供の幸せを祈ることが私を励ました。早く寝てくれえ、と苛ついていたのに、いざ眠ってしまうといつまででも寝顔を見ていたいと思った。満ち足りているというのはこのことかと思った。
 
そうじゃないんだ、これは猫の話なんだ、と角田さんは言われるだろう。そうなんだと思う、赤ん坊と猫は違うからね。違うんだけど、私は猫を飼ったことがない。角田さんのいうBC(Before Cat) 時代を生きている。(ちなみに、角田さんはAC(After CAT) である。)だから、ここまでの猫愛が、今ひとつ現実のものとして理解できないのかもしれない。
 
猫を好きになるということは、「うちの猫」を好きになることではなく、世界中の猫を好きになることだ、と角田さんはいう。そうか、そこも違うかも。世界中の子どもが好きかと問われると・・・でも、最近は好きかもしれんなあ。などとぐるぐる考える私である。
 
それにしても、本の中にたくさん溢れているトトの写真はどれも驚くほどかわいい。写真の撮りての愛情が駄々漏れのものばかりだ。
 
最後に書かれていた、西原さんが角田さんに猫をくれた理由には、ちょっと驚いてしまった。サイバラ、すごいじゃん。それが何だったか知りたい人は、この本を読みなさいね、といじわるしちゃう私なのである。

2015/10/6