真砂屋お峰

真砂屋お峰

42 有吉佐和子 中公文庫

1974年に最初は出版された本の新版。ずいぶんと若い時代に有吉佐和子を何冊か読んで、その後は離れていたが、中年以降になってまた読んでみると彼女のすごさに改めて気づかされている。

この作品は中央公論に連載されたものだが、連載開始後すぐに東宝演劇部から劇化上演の申し入れがあり、単行本上梓とともに具体化した。脚色、演出までも有吉佐和子本人がやってのけたという。確かに華やかな物語なので演劇には向いている。主演は佐久間良子だと作者自身が決めた。舞台写真が残っているが、佐久間良子は確かに驚くほど美しく存在感がある。

江戸の材木問屋の跡取り娘が様々な理不尽にあって、自分の大店の身上をつぶそうという物語。石屋の次男で一度は大工になった男に惚れこんで婿取りをしたものの、父の腹違いの妹に横やりを入れられて思うようにならず、財産を使い果たして身一つで惚れた男と残りの人生を過ごそうという豪儀な話である。一見地味で、実はものすごく高価な衣装や持ち物の話が絢爛豪華で、京都のお姫様と衣装比べをするなんぞ華やかなエピソードもあるが、実はヒロインの気性は地味でまじめで不器用でもある。私なぞはその地味な部分が面白く、派手に財産を使いはたす場面はむしろ面白くなかったりして、いつもの有吉佐和子の胸をすくような鋭さが欲しいなあ、と物足りなくさえあった。ただ、女ごときが…と言われる世の中にあって、平然と自分のやりたいことを突き通す姿勢はやはり気持ちいいものではあった。