126 ロジャー&チャーリー・モーティマー ポプラ社
何かの本で、誰かが勧めていた本。村田喜代子さんかと思ったら、どうも違うらしい。じゃあ、誰だろう?
イギリスの中産階級の父親が、出来の悪い息子を心配して、25年にもわたって書き続けた手紙を収録した本。名門イートン校に入学したのに全然馴染めず、退学したいという息子を諫めるところから話は始まる。父の説得にもかかわらず、息子はイートン校をやめ、コールドストリーム連隊に入る。バッキンガム宮殿の衛兵なんかを務める近衛歩兵連隊だ。ところが、そこも嫌になってやめてしまい、その後はいくつもの職を転々とするが、ドラッグやアルコールで身体を壊して入院したり、起業しては失敗したり、アフリカに出稼ぎに行ったり、かと思うとスコットランドで肉体労働に励んだり、どうにも落ち着かない。
そんな息子を心配しつつも、家族の動向を知らせたり、自分自身に降りかかったさまざまな出来事を、ユーモアを交えて書き綴っているたくさんの手紙。淡々とした文章の中に息子への愛情があふれている。笑いながら、ちょっと泣いちゃうような魅力的な手紙集である。実際、出稼ぎ先へ届いた手紙のファンになる人たちもいて、息子はよく食事時に父からの手紙を朗読させられたというエピソードすらある。
子どもは親の思い通りにはならない。それを知っていながら、心配せずにはいられない親の愛、そしてジレンマ。そんなものがしみじみと伝わる良い本である。父親が亡くなって二十年後にこの本は出版されたという。息子も、この手紙を捨てることなく大事にとっておいたというわけだ。
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