かわいい夫

かわいい夫

2021年7月24日

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「かわいい夫」山崎ナオコーラ 夏葉社

「美しい距離」の山崎ナオコーラ。あれも、夫婦の物語だった。この本は、夫について語ったエッセイ集。西日本新聞に連載したものと、描き下ろしが収められている。

山崎ナオコーラの夫は書店員で、妻より収入がない。結婚式をする時に貯金が40万円あると思っていたら、よく見たらゼロの数が一つ違っていて4万円しかなかった、というくらい、お金に頓着のない人である。でも、自分が大黒柱になっているからそれでいい、夫に収入はいらないから、いつもニコニコしてほしい、と彼女はいう。いうけれど、他の人に気の毒がられたりするとちょっと傷つく、とも書いている。

自分は容姿が悪いから結婚なんてしないと思っていたけれど、ひょんな事で結婚したから、夫を大事にして仲良く行きたい、と彼女は書いている。実際暖かくて優しくて良い夫のようである。何度も彼女は自分は容姿が悪いとかぶすと言われるとか、繰り返し書く。なので、どんな顔なのか気になってネットで調べてしまったが、別に変な顔ではない、温かみのある、ふっくらとした良い顔である。丸顔で頬がふっくらして鼻が低い。というのは、私と全く同じであって、ああ、そうか、私もぶすなのかしらん、などと考えてしまった。が、私は私の顔が好きである。最近、写真が真実を映さなくなって久しいなあ、とは思っているが、それは、老いを受け入れかねているだけで、基本、親しみやすくて良い顔だと思っている。ナオコーラも、良い顔だと思う。あ、こだわっちゃった、どうでもいいことに。

淡々とした日々が描かれているが、実はその中で、流産があり、父の死があり、そして子供の誕生がある。でも、どれも静かに流れる日々の中で起きることでしか無い。その穏やかさが、私は好きだ。それにしても、お父さんが大好きだ、と彼女は書けるのだなあ、と衝撃を受けた。私はそんなこと絶対書けないなあ、と思ったから。まあ、そういうことだ。

ここにあるのは、ちゃんと愛のある夫婦の生活である。こういうの、いいなと思う。お金よりも、美よりも、やっぱり大事なのは愛、である。

2020/6/20