この写真がすごい

この写真がすごい

2021年7月24日

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「この写真がすごい100Photographs 2008」

大竹昭子 編/著 朝日出版社

「西荻窪の古本屋さん」に紹介されていた本。
大竹昭子さんが、2008年に目にした写真の中から撮影者の有名無名、年齢、性別は問わずに「すごい」「おもしろい」「見飽きない」と思った写真を集め、そこに短文を添えたもの。どうしてこの写真が面白いのか、を率直に綴った文も面白く、もちろん、写真も楽しい。

私はかつて旅行中にカメラをぱちぱちやるのはかっこ悪い、と考えるような若者だった。そこへ行った証拠を残すために、その場の風景や空気を全く楽しまずに、みんな集まって次々に記念写真をとることに没頭する旅行者たちを冷たい目で見るかわいくない若者であった。

ま、確かにそうなのよね。旅行から返ってきた人に写真を見せてもらっても、「そこはどんなところだったの?」と聞いて満足する答えを聞けないことが多かったから。ただただ、バスで連れ回され、有名なところに確かに行ったという証拠写真だけをとるような旅行に何の意味がある?と思っても仕方ない時代もあったから。

でも、この頃はデジカメというものができて、惜しげも無く写真が取れるようになった。フィルムももったいなくない。気に入らなければいくらでも捨てればいいのだもの。

いつごろからだろうか。一緒に歩く夫が写真に没頭し始めた。あちこちで、熱心にカメラを向けている。最初はなんで?と思ったが、帰宅してパソコンで見てみると、これがなかなか面白いのだ。リアルに目で見た風景とはまた違ったものが切り取られている。思いがけない色合い、思いがけない構図で、確かにこの目で見たはずの場所が、全く違ったものとして浮かび上がっている。なるほど、これは面白い、と私も気づいてしまった。

良いデジカメがあって、何十枚も何百枚も惜しげも無くシャッターを押せば、素人でも時々ものすごくおもしろ写真が撮れる。それに気づいた人はきっと多いのね。最近は、どこへ行っても、真剣にカメラを睨む人が増えてきたような気がする。

何処かへ行って、帰ってきてから、その日の写真を見る。その楽しみに、この歳で気付いた。老後の娯楽が一つ増えたってことかな。

2013/12/12