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「できない相談」森絵都 筑摩書房
「みかづき」以来の森絵都である。あれは長編小説だったが、こちらは超小編である。一冊の中に38の小編が入っている。
テイストとしては、岸本佐知子の「ひみつのしつもん」的かな。日常の中に潜むささやかな理不尽をすくい上げて、ちょっとだけ光を当てる。例えば、切れたトイレの電球をどちらが取り替えるかで意地を張り合う夫婦の心の内とかね。
気軽に読めるけれど、普段なんとなく引っかかりながらやり過ごしていることを、ひとつひとつ、全部譲らないで見せてくれるような感じがある。そうなんだよねー、と思う。譲れないことを、譲らずに生きていけたらいいよね、と思う。偏屈なやつ、と言われてもね。
2020/6/15