みつあみの神様

みつあみの神様

2021年7月24日

207「みつあみの神様」 今日マチ子 集英社

古本屋なんていくもんじゃない。本が好きでセンスがよくて居心地のいい古本屋なんて。もう、置く場所がどこにもないというのに、また本を買ってしまった。ううう、私の馬鹿馬鹿。

可愛い女の子が洗濯物を干していると、洗濯バサミたちがけんかを始める。互いに取っ組み合う彼らを、可愛い女の子は紅白の洗濯バサミに作り替えてあげる。そして、平和が訪れる。

孵化した子ガメを守るゴム手袋。他人のために泡になることが嫌で家出した石鹸。様々なモノが感情を持ち、いきいきと描かれる。

可愛らしいエピソードの積み重ねのように見えた物語は、徐々に影を帯び、恐ろしい空気を漂わせ始める。防護服に身を包んだ人々、荒れ果てた世界。そこは3.11以降の場所。

牧場に生きる女の子。モノとして取り扱われる人間。であるからこそ、逆に、モノそれ自体を生きるものとして、感情あるものとして描こうとしているのかもしれない。

カズオ・イシグロの「わたしを離さないで」のようなエピソードもある。私たちは、原発をどうしたらいいのだろう。呆然とするしかないようなエンディングだった。

今日マチ子、もう少し読んでみたい。

2015/3/24