パパは脳研究者

パパは脳研究者

2021年7月24日

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「パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学」池谷裕二 クレヨンハウス

池谷さんは「和解する脳」以来かな。なんとお父さんになってらしたのね。結婚11年でようやく授かったんですって。研究者って大変だからなあ。結婚したからってすぐに子どもを育てられるわけじゃないよね、と、もうすぐ結婚する息子のことをちょっと考える私。それはともかく、池谷さんて子どもみたいにあどけない顔をなさっているけど、そりゃもうちゃんとした年齢でいらっしゃらるわけで、失礼、いつまでも若いお兄ちゃん学者のように感じてしまっておりました。今や立派なパパなのね。

新聞の書評欄にも載っていたように、この本はもちろん専門の脳科学に関連付けて理論的に人の脳の発達を説いてはいるのだけれど、結局のところ、うちの子ってかわいいでしょ、うちの子って素敵でしょ、にあふれている親ばか本であることには間違いない。子どもを育てる喜びに満ち溢れているのは、読んでいて嬉しいものだし、いいんだけどね。

養老先生は、たとえば絶対音感のことを取り上げて、生まれたての人間はみんな絶対音感を持っていたけれど、それを「失う」ことで言語などを取得していったんだと「遺言。」の中で書いてらしたんだけど、池谷さんは同じようなことを「適当さを取得する」という表現を使っていらっしゃる。書いていることは同じなのだけれど、それを失うと見るか、取得すると見るかは、それぞれの年齢なり経験によって違うのだなあ、と感じ入った。私は・・・どっちかって言うと、養老先生の言われることがわかるような気がしちゃうんだなあ。歳だからだろうなあ。

池谷さんの、子どもを「自立できるように育てる」という姿勢にはとても共感する。ただ、彼はのびのび育てたい、と言いながら、結構な教育パパなのだなあと思う。絵本は読み聞かせるよりは文字を取得して自分で読んだほうが効率がいい、みたいなことを書いているけれど、いや、それだけじゃないですよーっ、と私は言いたいね。

池谷さんは四歳になった我が子に「マシュマロ・テスト」というものを施している。マシュマロ・テストとは、マシュマロのようなお菓子を用意し、「15分我慢したら、もう一個あげるよ」と言って子どもを一人にするテスト。手持ち無沙汰で退屈な状況で、目の前のマシュマロを食べずに我慢できたら合格。

4歳の時点で合格する子は全体の30%と言われ、その合格者はおとなになっても好ましい人生を送る傾向があるんだと。「好ましい人生」って何さ、と思ったら、この本では

1. ドラッグやギャンブルへの依存が少ない(短絡的な誘惑に負けない)
2. 肥満が少ない(ここで食べたら後で大変なことになることを見通して我慢できる)
3. 大学の選抜試験の点数が高い(遊びたい気持ちを抑えて勉学に励むことができる)
4. 出世が早い(自制心の高い人は仕事も出き、信頼される)
といった特徴があることがわかっています。いずれも自分の衝動や欲望を適切に抑制する忍耐力が根底にあります。
            (引用は「パパは脳研究者」池谷裕二 より)

なんだそうで。池谷さんのお子さんは無事にこのテストに合格したんだそうだけど、でもさ。もし、合格できなかったらどうしたんだろう、とちょっと思う。自分の子育ては失敗だったって反省するのかな、この子には足りないものがある、と思うのかな。それってなんだかなあ。まあ、合格したから、タラレバは必要ないんだろうけどさ。

2018/5/1