プロット・アゲンスト・アメリカ

プロット・アゲンスト・アメリカ

34 フィリップ・ロス 集英社

旅先で読んだのだが、電子本だったのでうっかり記録から落としてしまった。少し時間がたったか記録しておく。

1940年代のアメリカの話。アメリカに住むユダヤ人一家、その中の九歳の男の子が主人公である。親ドイツ派のリンドバーグ(大西洋横断飛行を成し遂げた飛行士)が大統領になってアメリカが変容していく話である。

私は最初、これが史実に基づく物語だと思い込んで読んでいた。チャーチルの前に、リンドバーグが大統領だったことがあるのか?それともかなり有力な大統領候補の一人であったのか?などと首をかしげながら読んでいたのだが、事態がどんどん悪化していくのを見ているうちに、もしかして…フィクション?と思うに至った。読み終えてフィクションだとわかった時には心底ほっとした。

というのも、ヨーロッパでユダヤ人たちがナチスドイツにひどい目に合わされているときに、少し遅れてアメリカでに似たようなことが次々起きていくストーリーだったのだ。九歳の少年は、その中で引き裂かれていく。リンドバーグに好意的なユダヤ人ラビや、そのラビの愛人となる少年の母親の妹。断固として反リンドバーグの両親、そしてリンドバーグに憧れる少年の兄。家族のきずなはバラバラになり、リンドバーグから逃れようとした父の甥っ子はカナダに逃げて戦場へ出され、片足を失う。持ち家を奪われ、不毛の土地に入植した友人のユダヤ人母子の母は襲われて殺される。移民排斥、人種差別を称揚する人間が大統領になることで、社会がどんどん変容していく様子が実にリアルに、生活に密着して描かれている。それを読みながら、日本では選挙が行われ、恐ろしい結果が出ていた。半年以上前に旅程が決まっていた私たちは、こんなに突然決まった選挙に対し、期日前投票すら行えなかった。絶望の国に帰国するのだな、と思いながらネットでニュースを見ていた。この物語の少年のように、不安な気持ちになった。

この物語はフィクションだったけれど、私たちは現実に生きている。私たちの社会は、小選挙区制や、大量のネット広告、ネット発言によって捻じ曲げられた選挙結果を受け入れるしかなかった。これから起きるであろう様々なことに、私たちはどうやって立ち向かっていけばいいのだろう。