モンテレッジオ

2021年7月24日

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「モンテレッジオ 小さな村の旅する本屋の物語」内田洋子 方丈社

ヴェネツィア在住の作者は、客の欲しい本を察知し必要な本を探し出す素晴らしい古書店に出会う。その店の出自は、トスカーナ州のモンテレッジオであった。

モンテレッジオは山奥の、世の中から忘れ去られてしまったような小さな村である。その村の男達は、よそへ物売りに行くことで生計を立てていた。村には特に売る産物もなかったので、それで本を売ったのだ、という。だから、モンテレッジオの収穫祭で、人々は本のために踊る・・・・。

印刷屋もない小さな村の稼業が、本の行商だったと店主から聞いて、作者には数々の疑問が浮かんだ。なぜ本なのか、どこから仕入れて、どこへ売ったのか。ネットで調べても、なにもわからない。では、その村へ行こう。そう思い立ったところから、この本は始まる。

「五足の靴」に引き続いて、歴史をたどる旅である。こういう本が続く。そういえば、「死に山」だってそうだったもの。そして、どれもが非常に面白い。

小さな村の、本の行商は、かつて、まるでインターネットのような役割を果たしていた。そして、それは社会を変え、政治を変え、文学を変えた。本というものが果たす役割を改めてしみじみと知らされた、そんな本である。とても、面白かった。

2019/1/15