三鷹天命反転住宅

三鷹天命反転住宅

2021年7月24日

「虫眼とアニ眼」で宮﨑駿さんが触れていた「天命反転住宅」。本には荒川修作さんの名前しか出ていなかったけど、これは、彼のパートナーでもあるマドリン・ギンズさんとの共作となる集合住宅である。場所は三鷹。実際に住んでいるお宅が五軒、事務所に一軒、残りをウィークリーマンションとして貸してある。借り手がいない時期に、見学が可能ということで、この夏に、見に行ってきた。

住宅の外見は、こんな感じ。

見学したのは三階の端の部屋。

中に入ると床が凸凹で、いくつかの部屋と言うかユニットに分かれている。球体の部屋があって、ここの音響がすごい。

真ん中は凹んでキッチンになっている。キッチンの周りはダイニングテーブルの役目。

洗面所はこんな感じ。はしごがタオル掛けになっている。

天井のむき出しの配管もカラフル。

人は一度に五色以上が目に入ると何色と認識しないで、ただただカラフルと認識するそうだ。どこを見ても五色以上見えるようにすることによって、それが環境として感じられるようになるから、むしろ疲れないのだという説明だった。たしかに、中にずーっといると、割に慣れてしまって、けばけばしいとかうるさいとかいう感覚はなくなった。

写真にうまく撮れなかったのだが、床は壁土のような素材で、凸凹になっている。平面はほとんどない。素足で歩いたら、とても気持ちいいけれど、足首の弱い私は、ここで暮らしたら間違いなく毎日のように転ぶだろう。家具も置けないし。でも、球形のお部屋は、中にいるだけで子どもは大喜びだろうし、凸凹の床も、転がったり、這ったりしたらきっとものすごく楽しいはず。

この家、床の高さが場所によって違う。住んでいる人の証言によると、親は子どもから見て、より高い位置に立って叱ろうとする。無意識にそうなるらしい。それに対して、子どもはというと、はしごに登って、親より高い位置に逃れてそこで叱られるんだそうだ。本能的に行動するんだろう、面白い話だ。

この建物は、一階の一号室から順に作っていったそうで、床を凸凹にすることに職人さんがビビってしまって、最初は控えめの凸凹で、中に入れる砂の量も控えめだったのが、だんだんなれて大胆になってきて、三階を作るときは思い切り凸凹にできたんだそうだ。

というわけで、見学したお家は、かなり凸凹していて、土の中に砂もたっぷりはいって、ざらつきも強かった。あとでおじゃました事務所は最初の頃作ったので、凸凹が小さめで、ざらつきも少なくて、印象が違っていた。

屋上からの眺め。

これは住居というよりは、ひとつの芸術品なんだな。ここに長く住むのは大変そうだしめんどくさそう。一週間くらいなら住んでやらんこともない、と夫は言っていたが、疲れそうだから、私は見学するだけでいいや。

2014/10/10