夏のルール

夏のルール

2021年7月24日

165

「夏のルール」ショーン・タン 河出書房新社

ショーン・タンの不思議さは「アライバル」「遠い町から来た話」で、十分分かっているつもりだった。でも、これはその更に上を行った。

寂しいような、恐ろしいような、物悲しいような、楽しいような、懐かしいような、ありえないような。様々な形容詞の波に襲われるような絵本。

ルールは守ること。意味のわからないルールなら、なおさら。

(引用は「夏のルール」より)

子どもの頃って、こんな感じだったかも、と思う。世の中のルールがまだ良くわかっていなくって、どうしてそうなるのか、どうしてこうしなければならないのか、納得はしないけれど、そうしておかないとなにかとても困ったことになってしまう、きっとそうだ、という強い確信だけはあった。それは理不尽なものもあったし、でたらめなものもあったけれど、たしかに守らねばならないルールもあった。どれが本物で、どれがでたらめかなんて、ちっとも判ってなかった。

そんな頃の不思議な感覚。世界がまだなぞに満ちていた頃の夏休み。だから懐かしいような感じもあるのかもしれない。

読み手によって、いろいろに意味を変え、味わいを変えるような絵本だ。

2015/1/14