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「夏のルール」ショーン・タン 河出書房新社
ショーン・タンの不思議さは「アライバル」や「遠い町から来た話」で、十分分かっているつもりだった。でも、これはその更に上を行った。
寂しいような、恐ろしいような、物悲しいような、楽しいような、懐かしいような、ありえないような。様々な形容詞の波に襲われるような絵本。
ルールは守ること。意味のわからないルールなら、なおさら。
(引用は「夏のルール」より)
子どもの頃って、こんな感じだったかも、と思う。世の中のルールがまだ良くわかっていなくって、どうしてそうなるのか、どうしてこうしなければならないのか、納得はしないけれど、そうしておかないとなにかとても困ったことになってしまう、きっとそうだ、という強い確信だけはあった。それは理不尽なものもあったし、でたらめなものもあったけれど、たしかに守らねばならないルールもあった。どれが本物で、どれがでたらめかなんて、ちっとも判ってなかった。
そんな頃の不思議な感覚。世界がまだなぞに満ちていた頃の夏休み。だから懐かしいような感じもあるのかもしれない。
読み手によって、いろいろに意味を変え、味わいを変えるような絵本だ。
2015/1/14