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「大家さんと僕と僕」矢部太郎 新潮社
「大家さんと僕 これから」を図書館にリクエストしたら、漫画のリクエストは受けない、と断られてしまった。ところが、この本は買ってくれたんだな。なぜなら、活字の文章部分が多くて、いわゆるマンガ本には当たらないかららしい。だけど、声を大にして言うけれど、この本と「大家さんと僕 これから」とじゃ、後者のほうがずっと価値があるからね。まず読むべきは後者であって、これじゃない。
この本に読む価値がない、と言っているわけじゃないよ。ただ、この本は、「大家さんと僕」が手塚治虫文化賞短編賞を受賞したことを記念して作られた、いわばガイドブック、ファンブックだ。「大家さんと僕」の周辺にいたり、ファンだったりする人たちがたくさん原稿を寄せているだけで、矢部太郎の最も美しい部分が出ているのは間違いなく「大家さんと僕 これから」の方だし、どちらか片方を読むのなら、「これから」を読まなくちゃいけない。なのに、活字が多いだけで、図書館はこっちを選ぶ。図書館、反省しなさい。
この本では、たくさんの有名人、著名人、漫画家たちが、どんなに「大家さんと僕」が好きか、どんなふうに関わったか、が書かれている。もちろん、矢部くん自身の受賞前後のことや、「大家さんと僕」番外編なども書かれている。この本の意義はすごくわかるし、受賞はとても嬉しいし、矢部くん良かったね、と思う。ここには、好きなものについて、好きな人達が集って語る喜びがあふれている。そういう本だ。でも、それは、好きなものそのものではないからね。
買うほどじゃない、借りて読んで丁度いい。そういう本だった。
2019/10/21