最相葉月のさいとび

最相葉月のさいとび

2021年7月24日

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「最相葉月のさいとび」最相葉月 筑摩書房

「セラピスト」「れるられる」の最相葉月の雑文集である。平成十五年刊。十年以上も前の本だ。図書館の書棚で目があったから借りてきた。細かい活字で、ときに三段組になったりもして、読むのが大変そうだなあ、と思ったのだが、実家への往復の電車の中であらかた読み切ってしまった。とても面白かった。

最相葉月というと、どことなく沈み込むような、真面目で静かで誠実で、陰か陽かといえば陰の人という印象だったが、この本では思いがけずに明るい。「さいとび」とは並、上、特上、その更に上をいく、メニューにはないメニューという意味だそうだ。ある料理屋で食べたお好み焼きが「さいとび」だったそうで、なんじゃこりゃああ、と叫ぶほど美味しかったそうで、それを題名にしたかったのだという。

原稿料をもらうようになって十年目の節目に、今まで書いてきた記事を一冊の本にまとめたのがこの本である。「絶対音感」で注目され、「青いバラ」を書いた後くらいか。随分たくさんの文章を書いていたのだなあと感心する。ジャンルは多岐にわたっているが、この人の基本的な姿勢、誠実で深く考えるところは常に変わらない。そして、意外なことにギャンブラーだったり野球好きだったりする。こんなに活発な人だったとは知らなんだ。まあ、人は変わるからなあ。

2016/11/20