48 パーシヴァル・エヴェレット 集英社
2024年にアカデミー賞脚色賞を受賞した映画『アメリカン・フィクション』の原作。と言っても、映画、見てないけど(笑)。見たい。
主人公はアフリカ系アメリカ人の作家。インテリ家系に生まれ、父親も兄も姉も医者。自身は純文学作品を書く作家だが、あまり売れないので大学教授もしている。母が認知症になり、施設に入れるお金もない、兄弟もあてにならない。仕方ないので、というよりやけくそになって三文小説を別名で書くと、これがベストセラーになってしまう。
アメリカでは、いかにも黒人らしい小説…白人受けする小説が黒人文学としてよく売れるらしい。貧困と差別の中、暴力と薬にまみれ、女性を孕ませる、破滅的な黒人の姿。その苦悩の姿を描くと「リアル」「鋭い視点」などと持ち上げられる。あまりにも軽薄なそういった小説を見てうんざりした主人公がパロディの意味も込めて描いた、いかにもステレオタイプの黒人小説が売れに売れて、母の施設代を生み出す。そして、純文学者としての彼が審査員の一人にもなっている大きな賞の候補作にまでなってしまう。
アメリカではオフィシャルには差別は存在しないことになっているらしい。だが、そんなことは決してない。白人の求める黒人らしさに答える映画や小説が売れるという現実。差別の裏側、というよりそれこそが真実であるところのリアルを描く物語。そして、これがコメディ映画となって、アカデミー賞やトロント国際映画祭観客賞などを受賞している。
「虎に翼」のスピンオフドラマ「山田轟法律事務所」を見た。差別とは何か。その背景に何があるのか。そういったことを丁寧に静かに描き出すドラマであった。その直後にこの小説を読んだ。肌の色は、一目でわかり、そして変えることができない。女性であること、部落出身であること、性的マイノリティであること、そして肌の色が違うこと。それぞれに「人と違う」ことが差別につながる。私たちはほかならぬ私として生まれ、誰一人として同じ人間はおらず、みんな違っているというのに。そんなことを改めて思う小説であった。厚い本だが、一気であった。映画も見たい。
