直島へ 1

直島へ 1

2021年7月24日

毎夏、どこかへ旅行する。以前は家族四人で行っていたが、息子が北海道へ行ってしまってからは、三人になった。去年は息子が帰省して、娘の夏期講習の合間 を縫って久しぶりに四人で箱根に行ったが、今年はもうだめだ。息子は忙しいし、高校生になった娘は部活で休みがない。しょうがないので、娘の合宿期間内に 夫婦で旅行することにした。

夫婦で行くのだから、子どもが飽きないように、なんて考える必要はない。大人じゃなきゃ楽しめないような所へ行こうぜ、と直島へ行くことにした。アートがたくさんあるという瀬戸内の島に、前から行ってみたかったのだ。

福武書店ことベネッセが、現代美術と自然と歴史を融合させようといろいろやっている島だ。美術館の中にレストランとホテル がある「ベネッセハウス」。古民家を改修して現代美術の作品に変えてしまうという「家プロジェクト」。建物が全て地中に埋まっている「地中美術館」。銭湯 をまるごとアートにしてしまった「I♡湯」。李禹煥の作品を集めた「李禹煥美術館」。他にも港に置かれた草間彌生のかぼちゃなど、様々な屋外作品があると いう。

私はこれらの情報を「直島 瀬戸内アートの楽園」から仕入れた。ただ、行く前にあまり知ってしまうと新鮮に楽しめない気がして、薄目を開けて、そうっと眺めるだけにしていた。

出発当日。長野で五泊六日の合宿だという娘は大きなキャリーバッグをがらがら引きずっている。我々は、二泊目のホテルにあらかじめ荷物を送ったので軽装。本当はもう少し後でもいいはずの娘も親の都合に合わせて一緒に家を出る。そして、親子で反対方向に出発。

私鉄から山手線に乗り換え。朝の山手線は混んでるなー。夫によれば、夏は学生がいない分、これでもまだましなんだぜ、ってことなんだけど。途中、緊急停止 ボタンが押されたとかで数分間停止したりしてイライラしたが、なんとか無事に品川へ。エキュートでお弁当を買う。私は幕の内、夫はめはり寿司。いろんなお かずがちょっとずつ入ってるのが、私は好き。

新幹線に乗り込む。「身の上話」を読み出したら、すごく面白くて夢中になり、寝るつもりが一睡もせず。夫はぐうぐう寝ていた。名古屋すぎあたりでお弁当。そして岡山下車。

岡山からはマリンライナーに乗り換えて、茶屋町まで。ホームで待ってる間、とにかく暑い。茶屋町からは宇野港まで、さらにローカル電車に乗る。

宇野港で降り、あまりの暑さにコンビニでアイスを買う。港でかなり待つ。待合室に「乗り遅れた方、最終船が行ってしまった方のために」とネットカフェのポ スターが貼ってあって、なるほど、と思う。大学生の合宿らしき一団や、外国人観光客も一緒に待っている。やっとフェリーが来る。

フェリーは意外に大きい。クーラーの効いた座席に座ってのんびり船旅を楽しむ。瀬戸内海って、島の向こうに島が重なって、全然広さを感じない。琵琶湖のほ うが広いくらいだわ、と瀬戸内海が気を悪くするような感想をうっかり口にしてしまうほどだ。ずうっと島の脇を走っていくので、そのうちに広い海原に出るの かと思っていたら、そのまんま、着いてしまった。あらま、これって直島だったのね、とずっと見えていた島を改めて眺めてしまう。

さて、直島上陸。おお、さっそく草間彌生のかぼちゃが見える。

港にいきなり、でん、と置かれている。最初は地元の人もびっくりしていたけれど、子どもたちにはすぐ人気になったらし い。ある時、嵐でへたの部分が飛んでいってしまったら、地元の漁師さんが船で海から拾ってきてくれたという。今じゃすっかりみんなに愛されているらしいか ぼちゃである。

2014/8/12