神父と頭蓋骨

2021年7月24日

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「神父と頭蓋骨 北京原人を発見した「異端者」と進化論の発展」

アミール・D・アクゼル 早川書房

 

ダーウィンの進化論を宇宙的規模にまで広げた偉大なる科学者、ピエール・テイヤール・ド・シャルダンは、また、イエズス会に所属する敬虔な神父でもあった。彼は世界中を飛び回って研究を深め、北京原人を発見、分析し、進化論を発展させたが、その成果を発表することを、ことごとくイエズス会に禁止された。人間は偉大なる神が作り給うたものであって、猿なんぞから生まれたものではない、からである。
 
テイヤールは、イエズス会に対しては従順であり、本の出版を差し止められればそれに甘んじたし、ローマにおいて地位を与えると危険であると判断されれば、中国やアフリカに流刑(?)されることも厭わなかった。中国での研究生活においては、ルシールという恋人(?)を得たが、神父である以上、彼女との性的な関わりは持たなかった。それが、彼女にとっては非常なる苦痛であり、疑問であったとしても、そこは譲らなかった。
 
戦争が勃発し、北京原人の骨は行方不明となり、テイヤールはその研究成果を充分に発表できないまま、死んだ。彼の死後、彼の本が出版され、それがどんなに偉大な研究であったかが評価され、認められた。北京原人がどこへ消えたかは、様々な追跡が行われたが、未だ明らかになっていない。
 
・・・とこれらのことが書いてある本だから、相当わくわくしそうなものだが、実は非常に読みにくかった。原文が悪いのか、翻訳が悪いのか定かではないが、文が硬く、かつ、焦点がずれるというか、わかりにくい部分が多く、読み通すには忍耐が必要だった。が、読み終えれば、やはり面白かったといいたい。

2019/10/4