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「芥川症」久坂部羊 新潮社
「病院の中」「多少生門」「耳」「クモの意図」「極楽変」「バナナ粥」「或利口の一生」の七編。どれも、芥川龍之介の読者ならそれとわかるパスティーシュ小説というか、オマージュというか。読んでいて、高校生の頃に筒井康隆を読んだ感触を思い出した。シニカルで鋭い視点、悪意を加味した笑い。こういうものは体力がないと読めないのかもしれないなあ、と思わずため息をついてしまう。
作者は医師でもある。全体に医療関係者への皮肉が込められている。「耳」や「極楽変」などは、かなりグロい。うう・・・ちょっと、苦しい。「或利口の一生」は、多くの人に苦い思いを感じさせるだろう、とりわけ、がん患者には厳しい内容だ。わかるけど。
賢い人なのだろうなあ、とは思った。でも、読み終えて疲れていることに気がついてしまった。中年は、もう少し優しい物が読みたいかも。
2015/10/9