開局70周年記念TBSラジオ公式読本

開局70周年記念TBSラジオ公式読本

67 武田砂鉄 リトルモア

「久米宏です。」「名著の話」などで何度も書いている通り、私はラジオが好きである。学生のころからTBSの「パックインミュージック」が好きだった。当時は愛川欽也、野沢那智と白石冬美、林美雄などがパーソナリティを務めていて、それに小沢正一や永六輔、黒柳徹子、おすぎとピーコなどもよく登場していた。深夜番組なので最後まで聞いていられなくて、たいてい寝落ちしていたので、ほぼ最初の方しか聞いたことがないのだけれどね。それから、久米宏の「土曜ワイドラジオTOKYO」を聞いて、その後一時、ラジオから離れた。

次にラジオを聞き出したのは、タモリの「笑っていいとも!」が終わってからである。結構なブランクがあるなあ。「いいとも」をぼんやり見ながらお昼ご飯を食べるのが定番だったのに、それがなくなったから代わりになるものを探していたらラジオに行きついたのである。小林信彦が週刊文春に連載しているエッセイで何度も伊集院光を褒めているのを読んでいたので、伊集院のラジオを試してみようとも思ったのだっけ。

それからは、どんどんラジオの面白さを再認識して、日中、一人でいる時はたいていラジオを聞いていた。主にTBSである。というのも、伊集院がTBSだったからね。そして、伊集院の朝のラジオが始まってからは、それが私のタイムキーパーとなった。あれは実によくできた番組だった。終わってしまったのが、本当に残念でならない。しばらくは喪失感でぼうっとしてしまったほどだ。

この本は、TBSの開局70周年を記念して、様々なラジオ関係者へのインタビューをまとめたものである。編集者の武田砂鉄もTBSで番組を持っている。この本の企画が始まったころは伊集院の朝の番組はまだ順調だったのだなあ。出版されたころには降板が決まってしまっていた。なんだかなあ。

ラジオは、じっくりと話ができるメディアである。だらだら話を続ける中から、だんだんに言いたいことが伝わってくることもあるし、作り手と聞き手が、まるで一対一で向き合っているかのような手ごたえもある。全く興味のない分野のゲストの話も、聞き流すように聞いているうちに、突然心をつかまれる瞬間があったりもする。永六輔が、戦争体験を繰り返し伝えようとしていたのもラジオである。ラジオには、そういう力がある。何の興味もなかったことがじわじわと聞き手にしみ込んで、しっかり心に根付くようなところがある。嘘はバレるし、人となりもわかってしまう。ラジオ番組を持つ人たちが、どんなメディアのどんな番組よりも自分のラジオを大事にするのは、そういうことがはっきりわかるからだと思う。

これからも私はラジオを信頼する。伊集院光にも、いつか、必ずまだ昼の番組をやってほしい。それをずっと待っている。