青春とは、

青春とは、

2021年7月24日

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「青春とは、」姫野カオルコ 文藝春秋

「彼女は頭が悪いから」以来の姫野カオルコである。姫野さんは、作品によって文体も人格も若干変わる。この作品はむしろ「謎の毒親」と連動するところがあるのかもしれない。

最近シェアハウスに引っ越したばかりの中年というか初老の女性が、コロナ禍で暇を持て余して、高校時代にクラスメートから借りっぱなしにしてしまった本と、当時のクラス名簿を眺めながら当時を思い出す。それだけの物語なのに、なぜこんなに面白いのだろう。

「謎の毒親」を思い出すような、支配的で無茶苦茶な親に抑圧されていた高校生の彼女は、学校だけが自分の居場所であった。といっても、そこでキラキラした青春を送ったわけではない。ぱっとしない、何も思い通りにならない、地味な時代ではあった。が、それでも振り返れば溢れ出る思い出。ミッシェル・ポルナレフのコンサートに行くために作り出した策略と嘘。色っぽい保健の先生をめぐる同級生男子たちの動向。痩せようと思いながら食べる焼きそばとたこ焼き。家を脱出するためのあらゆる方策。そして、その後に再会した高校時代の彼らに明かされる真実。それらが、なんとも魅力的に描かれている。

もしかしたら、私が同じような時代を生きてきたからだろうか。私も、彼女と似たような、抑圧された家庭で、なんとか策略を図りながらうまいこと生き延びようとしていったからだろうか。

高校時代なんて本当に何も知らないで、だのに、何でもわかっているつもりで、むちゃくちゃでダサくてかっこ悪くてみっともなくて。でも、今振り返るとなんとイキイキしていた時代だったのか。高校なんて、全然楽しくなかったし、地獄みたいな日々だったと今振り返っても思う私だが、それでも一生懸命生きていたんだな、とは思う。あの頃の自分を抱きしめてやりたい想いに駆られる。だから、この本が面白かったんだろうか。姫野カオルコ、いいぞ。と思った。

2021/2/12