144 宮川サトシ 小学館
第1回「スペリオールドキュメントコミック大賞」大賞受賞作品。その割にあんまり話題になっていない気がするが、私が知らないだけなのか?
作者は、今まで家族にかかわるほのぼの漫画を描いてきた人だという。だが、今まで一度も作品に登場させたことのなかった身内がいる。それが、30年間実家に引きこもり続けてきた15歳年上の兄である。
私はこの人の作品は初めてだが、家族愛を描き、最愛の母を看取った作品もあるという。だが、本作に登場する母親、あるいは父親や兄弟たちの関係性はどこか歪でぎくしゃくしたものでしかない。本当のことを隠しながら、問題から逃げながら生活が続く感覚。こういうのを機能不全家庭というのかもしれない。
作者は優しい妻とかわいい二人の子どものいる幸せを手に入れている。だが、子どもがテレビを争って兄弟げんかをすると、すぐにもう一台テレビを購入する。ファミレスで言い争いが始まると、自分の注文を取り消して出て行ってしまう。家庭内の争いに耐えられず、そこから逃げ出すのだ。
家庭内に不穏なものがある。だが、見ないふりをし、突き詰めることをせず、その場その場を何とかやり過ごし、時間が過ぎればそれで良しとする。そんな家庭を私も知っている。そういう家庭に育った、と思う。わたし自身や私の身内が作者の兄のような引きこもりになる可能性だって十分にあった。いや、それすらできない、許されない家庭であったと考えたりもする。家庭はブラックボックスで、そこで育ったものは、それが普通だとしか認知できない。みんなそんな風だと思い込んでいる。異常性にはなかなか気づけない。
重いテーマである。いったい作者はどこへ向かっているのだろう。まだ二巻目なので先が見えない。これを読み続けられるかなあ。少し自信がない私である。
