81 西加奈子 新潮社
昨日も書いたが、ヒースローでの乗り継ぎに遅れてひどい目に遭った。ひどい目に遭って意識がもうろうとしている最中にどうやら西加奈子を2冊読んだのだが、記憶が若干飛んでいて、「クイーンズ・ギャンビット」を読了後に、そうだ、これらの本も読んだのだった!と気がつくに至る心の動きがあったので、その順序で書いている(笑)。
もう10年以上も前に発表されているので、西加奈子が若かった頃の作品だな。「漁港の肉子ちゃん」みたいなパワフルな人間を描く一方で、こんな繊細な女性も書いていたのか・・・とちょっと驚く。これは繊細な恋愛小説である。そして、私は繊細な恋愛小説がどうやら苦手である。
パートナーがいるとわかっている相手にどうしようもなく惹かれることはあるだろう。その人と関わりあうと傷つくことが分かっていても、どうしても関わってしまうこともあるだろう。それで泣くことだってあるだろう。そりゃそうだ。でも、そんな修行、積まなくたっていいんだぜ?と思ってしまう私は無粋なおばさんである。
帰国して、溜まっていた「虎に翼」を一気見した。友情結婚するという職場のカップルに、最初はよく考えろ、と言ったとらちゃんが、後になって、本人の人生だから、誰も責任とれない、自分で選べばいい、みたいなことを言った。そうだ、誰も自分の人生に責任なんて取ってくれない。傷ついても、傷つかなくても、それは自分が選んだことだ。だから、どんな相手を選ぼうが、そりゃダメだぜ、なんて私は言わない。言わないけど、傷つくと強くなれるとか思ったらいけないよ、とは思う。恋愛が人を強くするとは限らない。それが美しいものだとも特には思わない。自分が幸せになれるかどうかを、自分でしっかり見定めるのは、自分への責任だ。自分は自分で守らなくちゃね。
なんてことを考えながら、読んだ。若くて、ひりひりする恋愛中の人は、全然違う気分で読むんだろうな。