159 井上荒野 幻冬舎
「照子と瑠衣」以来の井上荒野。(そういえば、元ネタの映画「テルマとルイーズ」を見た。思ったよりバイオレンスな映画だったけど、不思議な爽快感があった。)
佐世保の和菓子屋に嫁いだ女性が、大学時代の知り合いと不倫に走り、その人の別荘で落ち合う…はずが現れない。それから彼女は行方不明。その後の十二年を彼女の周囲の人々がどんな風に過ごしたか、が描かれている。
井上荒野は最近、八ヶ岳辺りの別荘地に居住しているらしい。「猛獣ども」も「照子と瑠衣」もそうだったように、この本も別荘が不倫の舞台だ。別荘って、ちょっと別世界に連れていかれるし、人里離れているし、特別なことが起きそうだものね。最近だとクマが出そうだがなあ。日常との隔絶感がある。
井上荒野は不思議な世界を作り出す。今回も、カンフーマンという何を目的としているかわからない、誰も振り返ってみもしない大道芸の男や、その引退パレードが導入に使われている。しずかなパレードは、カンフーマンの引退パレードであるのだが、その後の12年間のそれぞれの人生もまた、ただただしずかに、誰にも気づかれず、同じ速度で進むパレードのようでもある。
カンフーマンとその妻、子供、いなくなった女性の夫、その娘、最近相手、不倫相手、不倫相手の妻、女性の行方不明の元凶となる夫婦とその娘・・・・。様々な人の12年間。何もないような、でも、確かに日々何かが起きているような人生。そして、最後に事実が明らかになる。ミステリのような、そうじゃないような。読み終わって、ふーーーっと息をつくような小説である。この人にはいつも持っていかれるなあ。
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