マラガ・ジブラルタル・マドリード・リスボン・ヘルシンキの旅その4

マラガ・ジブラルタル・マドリード・リスボン・ヘルシンキの旅その4

翌朝。イベリア航空のサイトを調べると、朝一番のリスボン便は予定通り飛んでいる。ほっとして朝食をとり、早めに空港へいく。チェックインも無事済ませて荷物も預ける。搭乗ゲートがまだ発表になっていないので、喫茶室でお茶を飲みながら時間をつぶす。そろそろ搭乗ゲートが発表になる時間に、スマホに突如イベリア航空からメールが入る。見ると、「君の搭乗便は欠航になったよ」みたいなことがあっさりと書いてある。ええええ!!!

どうしたらいいんだ。頭が真っ白になる。空港ロビーの相談窓口みたいなところがあるので、そこに聞こうとするが、なんか知らんおじさんが係員とのんびりしゃべっていてなかなか終わらない。やっと話が終わったので、事情を説明すると「イベリアのオフィスへ行きなさい、この階じゃなくて下に行って」と言われる。あわてて下の階まで行くと、そこには別のターミナルに行くための地下鉄が走ってるだけで、係も誰もいない。探し回ったけど、スタッフがみつからないので、もう一度元の場所に戻って、同じ人に聞くと「だから、下に行けって言ってるでしょ」的なことを言われる。もう一度下へ行き、やっぱり何もなくて戻ってくる。もうだめ、この人じゃわからない。スマホのAIに聞いてみると、イベリア航空のオフィスはゲート何番だかの近くにあるからそこへ行けと教えてくれる。マドリード空港は広い。かなり遠いぞ。歩く歩く。途中でお土産屋さんに「イベリアオフィスはこっちでいいの?」と聞くと「もうちょっと行ったらあるよ」と教えてくれる。あった、あった、暇そうなイベリアオフィス。

チケットを見せて事情を話すと、係員は何やらパソコンを叩いたり、どこかに電話を掛けたりしている。そして「OK、あなたたちの飛行機は今日はキャンセルされた。明日の朝にならないと飛ばない。今夜は近くのホテルに泊まって。ランチも手配してあるから、それを受け取って、ホテルバスの乗り場に行って、ホテルに行ってね。ディナーも出ます。荷物は預かったままで明日の飛行機に乗せます。」とホテル名の入ったチケットをくれる。荷物はもらえないの?と聞くと、その方が安全だから、と言われる。ロストバゲッジを心配してるんだけど…と聞くと「我々はそんなことしない。」と断言される。本当かなあ。

しかたなく空港を出て、ホテルバス乗り場に行くが、指定されたホテルのバスなんて来ない。ほかのホテルのバスは次々来るので、そのドライバーに聞くと「そのホテルバスもそのうち来るからここで待ってて」と言われる。我々と同じ境遇らしき旅行者が何人も来て、皆不安そうに同じチケットを握りしめてバスを待っている。一時間半ほど待った。風が強く、ときおり雨も降っているので寒い。待ちきれなくなって、タクシー乗り場へ向かう。もっと早くにその選択をした人たちが何人もいたようだ。タクシー乗り場も行列状態。30分待って、近くすぎるホテルなので何とも不機嫌なドライバーに運んでもらって、ようやく到着したら、ホテルバスも今到着したみたい。あーあ。それでもチェックインはそれほど待たずにできて、とにかく部屋へ。

広くてキッチンまでついてるお部屋だけど、なんでスリッパはないの?ヨーロッパのホテルはスリッパのないところが多いので、我々はスリッパも持参していたのだが、それはトランクの中、飛行機の中。寝巻下着も洗面用具もトランクの中。風呂上がりにまた靴を履くのはなんだかなあ。それでも部屋にバスタブがあったので、暖かいお湯に浸かったら少し人心地が付いてきた。事前に準備しておいた(AIに教えてもらった)リスボンのホテルへのメールを送る。これが本当に役に立つとは。「ストームのせいで飛行機がキャンセルされたけど、明日には行くから部屋は確保しておいてね」という内容。しばらくしてホテルから「OK、部屋は確保してあるよ、気の毒だったね、気を付けてきてね」的な返信が来てほっとする。

夜はホテルレストランでビュッフェスタイル。飛行機をキャンセルされた旅人たちが集っていた。ちなみに翌朝の出発便は時間が早すぎて朝食とってると間に合わないよ、とフロントで言われてしまったけど、ロビーに自動販売機があったので、そこでサンドイッチを購入。翌朝は早起きしてそれをぼそぼそと食べて、空港行バスに乗ったのであった。

マドリード空港は広い。何年か前にマドリードのトランジットの時間が少なくて、ゲートを探して走り回った経験がある。あの時も怖かった。ショップのスタッフに「マダム、落ち着いて、あなたの飛行機はまだ飛んでないから大丈夫だよ」と言われた記憶がよみがえる。空港バスは、我々の乗るゲートに行く前に、別のゲートをいくつか経由し、その後、市内に出そうな勢いで違う方向へひた走る。ひやひやしてしまったが、結局、ちゃんと正しいターミナルに到着。あー、不安だった。

昨日のうちにチェックインは済ませてあるので、そのままセキュリティだけ通って中に入る。今朝はちゃんと飛ぶらしい。やれやれ。小さい飛行機は満員。臨時便かも。皆さん、昨日乗れなかった人たちらしい。乗ってしまえば、あっという間にリスボンに着く。たぶん羽田大阪間よりちょっと遠い程度の距離なんじゃないかしらね。

リスボンに到着。天気はよろしくないが、とにかく無事ついただけでもありがたい。心配した荷物も戻ってきた。タクシーでホテルに向かう。ドライバーは車中で音楽をかけているのだが、途中から一緒に歌い出す。それも実に楽しそうに。驚いたのだが、それ以降も歌うドライバーに会ったし、ホテルスタッフにも鼻歌を歌っている人がいた。ポルトガルってそういう気質なのかな。楽しそうで、こっちもなんとなくうれしくなる。

車が旧市街に入ると、道はせまく、くねくねと曲がり、石畳のぼこぼこした感触が伝わってくる。かわいらしいトラムが走っている。

ホテルに到着。雨が降っているので駆け込む。古い建物をリフォームした風情のあるホテルだ。パスポートを出すと、ああ、例の昨日来れなかった人たちね、と言われる。部屋はもう確保してあるよ、とすぐ鍵を渡される。良かったらチェリーのリキュールを一杯いかが、と勧められるが、今飲むと倒れちゃうよー。部屋にはウエルカムエッグタルトが準備されていた。

フロントでランチにお勧めのレストランを教えてもらう。その店に行って、予約してないんですけど、というと「おお‥」と顔を曇らせた後、うそだよーん、という笑顔に変わり、どうぞどうぞ、と案内される。天井に本がたくさんぶら下がってる不思議なお店。イワシの塩焼きを頼む。これをナイフとフォークで食べるのがさー、と言い合っているとウエイターが「こうやって食べるのさ」と一匹だけナイフとフォークで上手に身を切り開いて見せてくれる。でもお箸があればそのほうがいいのよねー、しょうがないけど。料理はおいしかったし、良いレストランであった。

雨は降ったりやんだりだが、店を出て、頑張ってサン・ジョルジェ城へ歩いていく。徒歩圏内なんだが、坂を上るんだよね。狭い道、狭い歩道、つるつるの石畳。古い石造りのお城に到着。おお、これはリンドグレーンのカッレくんシリーズに出てくる古城のようだわ。ぐるっと城を回って、見晴らしのいい場所。古い町並みが広がって、美しい。ああ、私リスボンに来たんだわ、と突然思う。

小学生の時からリスボンに来るのが夢だった。リスボンという町の何が見たかったというわけではない。ただ「長くつ下のピッピ」の中で、学校に行っていないピッピにおまわりさんが「ものを知らないでいたらどんなに情けないかかんがえてごらん」というシーンがあったのだ。「誰かが君に『ポルトガルの首都はどこですか?』って聞いたとする。そのとき、君は返事ができないんだぜ。」ピッピはこう答える。「こう言ってやるわ。『ポルトガルの首都がどこなのか、そんなに気になるんなら、じかにポルトガルに手紙を出して、聞いてみなさいよ!』」「だがね、自分がそれを知らないというのは情けないと思わないかね?」ピッピは「確かに夜になると思い悩むかもしれないわね」と答えてから言う。「私ね、お父さんと一緒に、リスボンにもいったわ。」と。

なんてしゃれた会話だろう、と私は思ったのだ。相手の言うことを一度受け止めて、その通り、と認めてから、それを上回る答えを返す。おそらくそのおまわりさんも行ったことのないであろうリスボン(ポルトガルの首都!)にピッピは本当に行ったことがある。

それを読んで以来、小学生だった私は、絶対にいつかリスボンに行ってやる、と心に決めたのだ。そしていうのだ「でも私、リスボンにはいったことがあるわ。」と。まあ、おまわりさんにポルトガルの首都を聞かれることなんてないだろうけどさ。小学校時代の宿題を一つやり遂げたような気がした。

夜、明日はジェローニモス修道院に行こうという話になり、フロントでタクシーの手配を頼む。AIで調べると、ジェローニモス修道院は大人気で一時間以上並ぶことが予想されると教えられる。なので、オンラインチケットを事前購入。ここでもシニア料金であった。

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