祖母姫、ロンドンへ行く!

祖母姫、ロンドンへ行く!

124 椹野道流 小学館

ずいぶん前の話。お正月、親戚が祖母宅に集まった。作者がイギリス留学中の話をしていたら、祖母が「一生に一度でいいからイギリスに行きたい。お姫様のような旅がしてみたい。」と言った。すると、それを聞いた伯父たちが、資金は皆で出すから連れて行ってやれと言い出した。若気の至りで、そして、他人のお金でイギリスに遊びに行けると嬉しくなって「いいよぉ」と請け負ってしまった作者。高齢でいくつか持病を抱えて、そしてたいそうわがままな祖母を無事に連れて行き、帰ってくるというミッションがどんなに大変かその時はわかっていなかったのだ。

祖母の希望をフルに取り入れた五泊七日の旅行プラン。行き帰りは日本の航空会社のファーストクラス。宿泊はロンドン中心部の五つ星ホテル。一流のデパートで買い物をし、最高のディナーを楽しみ、お友達に自慢できるような素敵なものをたくさん見たいというのが祖母のリクエスト。

空港のチェックイン直後、お土産は後でねという作者を振り切ってすぐ免税店で香水を買い込み、勘定が遅いのでお手洗いに行きたくなったと仏頂面になる祖母。ファーストクラス専用ラウンジまで連れて行き、ゆったり仮眠させるまでが一苦労。以降、大変な旅が始まる。ロンドンではホテルのバトラーやドアマン、スタッフなどに助けられ、祖母の無茶ぶりに答える日々。祖母を寝付かせた後は留学時代の友人と夜遊びなどもして、結構ハード。作者は正真正銘の孫なのだが、スタッフ一同には秘書、雇われ人だと最後まで思われていたらしい。

わがままで無理難題を押し付け、すぐに疲れ、いきなり寝てしまう祖母との七日間。けれど、それはなかなかゴージャスであったし、多くの人の親切や助けに出会う旅でもあった。これ、貧乏人から見たら夢のような経験だわ、やっぱり。

後に認知症となり、もうお亡くなりになってしまった祖母との思い出。楽しかったけど、別世界の話であった。これを読んでもまたイギリスに行きたいとはあんまり思わない。派手な買い物も、ゴージャスなホテルライフも、私、縁がないからなー。でも、楽しかったよ。