3月のライオン 18

3月のライオン 18

12 羽海野チカ 白泉社

長い旅から帰ってきた。半年以上前からスケジュールは決まっていて、直前に選挙が決まったけれど、成すすべもなく、期日前投票すら叶わないまま旅だった。帰ってきたら、絶望の国が待っていた。

電子書籍。旅の途上で読んだ。今回の旅は夫がPCを持参したので向こうからブログを更新するつもりだった。ところがなぜかブログの書き込みページにログインできない。海外からだと駄目ですって言われてしまう。仕方ないので、ワードに下書きだけして帰国後に更新することにした。例によって夫のバックギャモンの旅に同行しているので、夫の試合中、私は暇なのだ。しかも今回の旅は大嵐に遭遇してしまって外に出ることすらままならない。結果、やたらと読書が進むのであった。忘れないうちに感想が書けるだけでもありがたい。旅の話はまた別に書くとして、本の感想である。

この作品は将棋漫画なのだが、将棋をろくに知らなくてもちゃんと読める。人間ドラマなのだ。今回も大事な対決があるのだが、その背後にあるそれぞれの人間模様が描かれていて、じんわり来る。とりわけここでは温かい、美味しい食べ物をつくる人の存在のありがたさが身にしみてわかるのである。

自分の女房を、「飯炊き婆」などと呼ぶ男性がかつていた。私の高校の倫社の教師である。女子は大学なんぞに進学せず、就職して、嫁に行くまで働いて親孝行するが正しいと授業中に言いおった。大嫌いだった。飯を作るためだけに存在するような女房役というのは全くゴメンだと私は心から思っている。その反面、食べることを大事にすること、愛する人に美味しいものを食べさせたいと願うことは美しいことだと知っている。その二つは、実はぜんぜん違うことなのだ。

天才将棋指しの主人公は、美味しいご飯を作る可愛い女性に恋をしている。彼女は飯炊き役などではない。彼の心の支えであり、かつ、きちんと自分で自分を支え行きていこうという意思のある人だ。彼は対局中に、彼女がどら焼きにあんこを挟む仕草を思い出す。それが戦う勇気につながる。対局でへとへとになった彼に温かいリゾットを準備する彼女。勝負の結果も聞かず、ただ、疲れ切った彼が少しでも食べられたことを喜んでくれる存在。

厳しい勝負の世界と、心温まる人間の関わり。その全く逆の世界が交わり合うところに、この漫画の良さがある。