161 井上荒野 U-NEXT
「しずかなパレード」に引き続いての井上荒野。なんだかもやもやするような短編小説が五編。どれも、同じ出来事が登場人物それぞれの立ち位置から描かれる。「ヤブノナカ」も、一人ずつ視点を変えて描かれていたっけ。同じ出来事でもそれを受け取る人間によって事実までもが変わる。それを描くのは小説の醍醐味の一つなのかも。
親友と自分の息子が恋仲になって家にやってくるという事態に立ち向かう中年女。お掃除のアルバイト先の家の奥様の不倫現場に立ち会い、その夫が帰宅する修羅場。がんを宣告された熟年の夫と若い妻。浮気をしている大学教授の愛人宅にその娘が訪れる話、そして、老女流小説家と若い編集者が隠れ住む別荘に、大雪の日に訪れる見知らぬ男。どれもぞくぞくするような現場で、そこに確かに同時にいるはずなのに、見ているものは全然違う。それが怖い。
井上荒野は怖い。じーっと見据えて、ふふふ、と含み笑いをしながら事実を暴き出すみたいな怖さがある。あなたはこれが事実だと思ってるでしょう。でも、本当はそうじゃなくて、こんななのよ‥‥。
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