末期ガンでも元気です 38歳エロ漫画家、大腸ガンになる

末期ガンでも元気です 38歳エロ漫画家、大腸ガンになる

2021年4月24日

18 ひるなま フレックスコミックス

新聞書評からだったかなあ。BL漫画家が末期ガンになった話を明るく描いていると強くオススメされているのを見て、思わず購入してしまった。で、読んでよかった、と思う。

急にお腹がすく、食べるとすぐお腹いっぱいになる、一日中お腹が鳴っている。その程度の症状で医者に行ってもいいのか?と躊躇していたが、ひどい生理痛に襲われて、そっちも含めて受診。最初の病院ではあれこれ検査して異常なし、で突っ返されたが、夫がどうしても別の病院を受診せよ、というので小さな個人病院に行ったらこの先生がゴッドハンドで。触診だけで怪しいと踏んで、すぐに大病院を紹介してくれた。なんだかんだでガンだとわかるまでに三週間、手術してステージ4とわかるまでに二週間、予後平均は30ヶ月とわかるまでに三週間。抗癌剤治療開始までに約80日間。怒涛のような日々の記録である。

とはいえ、漫画のトーンは常に明るい。というか、冷静である。作者は実は虐待サバイバーである、ということも途中で明らかになる。病気がわかってから泣いた夜が二晩だけあったが、それは病気のことというよりは、この期に及んで、絶対に会いたくない両親に連絡を取られてしまうのではないかとか、連帯保証人の件をどうするかという身内絡みの悩みからであった、というのが切ない。非常事態における冷静さはそうした虐待経験から培われているのかもしれない、とちょっと思ったりもする。聡明な彼女は、うつ病を持っている夫のこともちゃんと考えているし、彼女を支える友人、知人も皆、冷静で親切で誠実である。読んでいて動揺したり、オロついたりしないで済むのは立派なプロの仕事である。

若いガン患者にとって一番の命題は「日常をどう保つか」である、と書いてあったのだけれど、本当にそうだと思う。私はもう若くもないが、とある持病を持つ患者ではあって、一生、病気とは付き合っていかねばならない。(と言っても心配しないで。大したことじゃないからね。)そこで最も大事なのは、病気がどうなるか、ではなく、日常を生きることであり、日々を楽しむことである。ガンであろうが健康であろうが、(今みたいな状況では特に)いつどのように死ぬかは誰もがわからないことなので、日々をすこやかに過ごすということが最も大事である。

死ぬまで元気に生きる、ということ。この漫画を読んでそう思う。彼女の闘病が元気に続きますように、幸せに日々を送れますように、と心から祈る。そして、私達もまた、どんなことがいつ起きようと、日々を大事に生きていこう、と自分も含めてみんなにエールを贈りたくなる。頑張ろうね、私達。